2018年 08月 17日
盆二句 |
蓮の葉の上で空寝か茄子胡瓜 驢ノ703
駄句である。
盂蘭盆に、トンボやバッタに乗ってご先祖さまが帰ってくる。
そういう言い伝えがあると、つい先日まで知らなかった。
ショウリョウトンボ、ショウリョウバッタ、のショウリョウとは、
精霊だったのだ。
娘の仕事場の先輩が、目の前を横切って飛ぶ大きなトンボを見て、
「あ、きっとあのトンボにおじいちゃんが乗ってはるわ。」
と指差すのを聞いて、とても驚いた、と言うので検索したら、
様々な地域で、そういう言い伝えがあるとわかった。
楽しい景色だな、と思った。
例年は、盆入りから盆明けまで、お盆のお供えをするきまりだが、
今年は、お寺さんが来る日だけにした。
部屋に、いつもと違うものあったり、物の置き場所が変わったりすると
刀自さまが混乱する様子が目立ってきたからだ。
そんな事情もあり、年々、簡単になる盆支度である。
今年も、お供え物の野菜は、お供え用のセットではなく
家族の食事用に買った茄子や胡瓜、オクラ、レモン、万願寺とうがらし、
などを彩りよく蓮の葉に盛り上げた。
お供えセットだと、おもちゃ南瓜とか鬼灯などが小振りの茄子や胡瓜と
盛合わせて売られており、それが非日常を演出するのだけれど、
お供えした後、食べられないのが勿体ない気がする。
わざわざ買うのは、蓮の葉だけだ。
蓮の花や高野槙の入ったお盆用の仏花も、普段の倍の値段で、
ちょっと二の足を踏んだが、ご近所の小さなお花屋さんの
年に数度の掻き入れどきだ、ご祝儀気分で奮発した。
やっつけ仕事の様に、早口で経を読む坊さんの後ろ姿や、
その有り難みの薄い読経に、絡みつくように漂う線香の煙を眺めながら、
それぞれ癖のある我が子たちの人生にも、過去から連綿と繋がる癖のある
ご先祖様の遺伝子が絡みつき息づいているのだなあ、
などとぼんやり思う、今年の盆である。
盆を目前にして、夫の友人が亡くなった。
50年近く前に、お互いに何者でもない若者として出会い、
修業時代を共に過ごし、その後もそれぞれの場所で研鑽し、
時々には酒を飲み、語り合い、お互いに自分なりの仕事を
残せるようになった、そんな友のひとりが、逝ってしまった。
あまり感情を表に出さない夫だが、しばらくは口数も減り、
小さな溜め息が聞こえた。
動かせない仕事があり、通夜葬儀には参列出来なかったのだが、
もしも、仕事が融通出来たとしても、行かなかったのではないか、
という気がする。
仕事や功績には触れず、若き日の思い出だけを綴って送った弔電の
下書きを見て、そう思った。
盆前の帰省ラッシュで満員の新幹線を乗り継いで、葬儀に行った人が
託けた香典のお返しの品を届けてくれた。
故郷の名士として最後まで要職を務めた友人の葬儀は、大規模なもので
親しく別れを告げられるものではなかったが、御家族が自分を見つけてくれ、
遠方からの足労を労ってくれ、うれしかった。
などと報告してくれた。
「志」と書かれた包みを開けると、
友人の故郷の海の塩と、その塩を使った味付け海苔が入っていた。
海苔の好きな夫は、
「こんな、ええもんがあるんやったら、
もっと早ように持って来てくれたら良かったのに。」と、
自分のために友が持ってきたお土産の様に、じっと眺めながら、
明日は、おにぎり、な。
と、私の顔を見る。
もちろんです。
と、応える。
四十九日が済むまでは、亡くなった人の霊魂は、あの世に行かずに
まだ、この世にとどまっているので、盆近くに亡くなった人は
今年は新盆にはならないのだ、という。
そうなのか。
亡くなったばかりの新米の仏さまと、
ずいぶん前にあの世に行って、お盆に帰ってきた古参の仏さまが、
どこか、その辺で、あら、まあ、とか出会っているのだろうか。
三途の河の渡り方など、教えてくれていると良いなあ。
by unburro
| 2018-08-17 08:59
|
Comments(11)
ショウリョウバッタはキチキチと鳴くんでしたね。
ずいぶんみてないなあ。このあたりは精霊が近寄らないのかなあ。
ずいぶんみてないなあ。このあたりは精霊が近寄らないのかなあ。
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> saheizi-inokori様
ショウリョウバッタ、のショウリョウって
何だろう?
と、子どもの頃思ったような気がしますが、
まさか、ご先祖様とは、思いませんでした。
蝶に乗って帰ってくる、という地方もあるようです。
茄子の牛、胡瓜の馬、より楽しそうですね(笑)
キチキチバッタ、って呼んでいましたね。
道端の草むらからピョン!と飛び出してくる虫たち
バッタ、コオロギ、キリギリス、
皆どこへ行ってしまったのでしょう…
ショウリョウバッタ、のショウリョウって
何だろう?
と、子どもの頃思ったような気がしますが、
まさか、ご先祖様とは、思いませんでした。
蝶に乗って帰ってくる、という地方もあるようです。
茄子の牛、胡瓜の馬、より楽しそうですね(笑)
キチキチバッタ、って呼んでいましたね。
道端の草むらからピョン!と飛び出してくる虫たち
バッタ、コオロギ、キリギリス、
皆どこへ行ってしまったのでしょう…
>部屋に、いつもと違うものあったり、物の置き場所が変わったりすると
>刀自さまが混乱する様子が目立ってきたからだ。
unburroさんの気働き様、いつも感じ入っています。
実の娘でもなかなかできないことだと思います。
>もしも、仕事が融通出来たとしても、行かなかったのではないか、
>という気がする。
悲しみが深すぎてそんな気持ちになること、わかるような気がします。
で、ご主人様の気持をすっと汲み取って
>もちろんです。
>と、応える。
永年連れ添った間柄でも(だからこそ?)なかなかこうは行きません。
ご近所のお花屋さんとのお付き合いもさりげなく、
等々、何度も読み返してしまいました。
蓮の葉の上で空寝か茄子胡瓜 驢ノ703
肩の力が抜けた句、とってもいいです。
>刀自さまが混乱する様子が目立ってきたからだ。
unburroさんの気働き様、いつも感じ入っています。
実の娘でもなかなかできないことだと思います。
>もしも、仕事が融通出来たとしても、行かなかったのではないか、
>という気がする。
悲しみが深すぎてそんな気持ちになること、わかるような気がします。
で、ご主人様の気持をすっと汲み取って
>もちろんです。
>と、応える。
永年連れ添った間柄でも(だからこそ?)なかなかこうは行きません。
ご近所のお花屋さんとのお付き合いもさりげなく、
等々、何度も読み返してしまいました。
蓮の葉の上で空寝か茄子胡瓜 驢ノ703
肩の力が抜けた句、とってもいいです。
> pallet-sorairoさま
102歳というお年の割にはシッカリしている刀自さまですが
見慣れた風景に違和感があると、ス〜ッとシャッターが降りた様に
「ここはどこ?」と呆然モードに入る時があります。
いつもの服、いつもの食事、など変わらない事が、安定の鍵のようです。
季節感も薄れて、年中行事にも興味が無くなったようなので、
今年は、お寺側の都合もあって、刀自さまがデイサービス に行っている間の
お参りになり、一層、素速い現状回復を図りました(笑)
実の息子は、そんな母親の退行現象?にイマイチ納得がいかないので、
バタバタする私を、複雑な顔で眺めています。
血縁とは、そういう、理屈で割り切れない、温かいものなのだと思います。
私は、理性的で、冷淡?な観察者であり、介護人なのです。
夫は、優しすぎるところがあって、
死期の迫った病人のお見舞い、なども大の苦手。
お葬式も大嫌い。
余程の義理があるか、あまり仲良くない知人なら、
さっさと喪服を着て出掛けるのですが…
寝たふりしてる茄子胡瓜、の句。
褒めていただき、うれしいです!
102歳というお年の割にはシッカリしている刀自さまですが
見慣れた風景に違和感があると、ス〜ッとシャッターが降りた様に
「ここはどこ?」と呆然モードに入る時があります。
いつもの服、いつもの食事、など変わらない事が、安定の鍵のようです。
季節感も薄れて、年中行事にも興味が無くなったようなので、
今年は、お寺側の都合もあって、刀自さまがデイサービス に行っている間の
お参りになり、一層、素速い現状回復を図りました(笑)
実の息子は、そんな母親の退行現象?にイマイチ納得がいかないので、
バタバタする私を、複雑な顔で眺めています。
血縁とは、そういう、理屈で割り切れない、温かいものなのだと思います。
私は、理性的で、冷淡?な観察者であり、介護人なのです。
夫は、優しすぎるところがあって、
死期の迫った病人のお見舞い、なども大の苦手。
お葬式も大嫌い。
余程の義理があるか、あまり仲良くない知人なら、
さっさと喪服を着て出掛けるのですが…
寝たふりしてる茄子胡瓜、の句。
褒めていただき、うれしいです!

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今日は。お盆のお供え風景、趣があり素晴らしいなぁと感じ入りました。お花も高野槇など珍しいこちら九州ではお目にかからないものが入っていますね。さすが京都だなぁと思いました。
そしてまた小さなお花屋さんの掻きいれ時だということに心遣いをなさってunさんは、お優しいなぁと改めてつくづく感じました!
そしてまた小さなお花屋さんの掻きいれ時だということに心遣いをなさってunさんは、お優しいなぁと改めてつくづく感じました!
> こんのさん!
ありがとうございます。
夫は、ほんとうに優しい良い人です。
こんなワガママな私に愛想をつかさず、
付き合ってくれるのですから(笑)
誰にでも優しいのが、良いような悪いような…
ありがとうございます。
夫は、ほんとうに優しい良い人です。
こんなワガママな私に愛想をつかさず、
付き合ってくれるのですから(笑)
誰にでも優しいのが、良いような悪いような…
> jyon-nonさま
盆支度には、地域によって様々なかたちがあって
面白いですね。
商店街の小さなお店が、減っていくのはとても寂しいです。
時計屋さんや、布団屋さんなどが閉店して、調剤薬局と整体サロン、
そして美容室ばかりになって、つまらない町並みになってしまいました。
お花屋さんも、継ぐ人がいない様子で、心配です。
盆支度には、地域によって様々なかたちがあって
面白いですね。
商店街の小さなお店が、減っていくのはとても寂しいです。
時計屋さんや、布団屋さんなどが閉店して、調剤薬局と整体サロン、
そして美容室ばかりになって、つまらない町並みになってしまいました。
お花屋さんも、継ぐ人がいない様子で、心配です。
今年もお仏壇のお写真にも、やはり驢人さんは《フランス》醸し出していますね。
去年の“ボン•サンク”を思い出します。
ELLE gourmetというセンスの良さ満載の雑誌の写真に見えます。
緑と紫の中に鮮やかな色が映えて見事です!
お仏壇を持たない暮らしをしていますので、毎年お盆の季節には必ず言い訳めいた気分が溢れてきます。
“やっつけ仕事のボンさん”もいるのですね!クスッと笑ってしまいました。
それにしてもお仏飯の盛り方が美しい!
去年の“ボン•サンク”を思い出します。
ELLE gourmetというセンスの良さ満載の雑誌の写真に見えます。
緑と紫の中に鮮やかな色が映えて見事です!
お仏壇を持たない暮らしをしていますので、毎年お盆の季節には必ず言い訳めいた気分が溢れてきます。
“やっつけ仕事のボンさん”もいるのですね!クスッと笑ってしまいました。
それにしてもお仏飯の盛り方が美しい!
> mother-of-pearlさま
お仏飯、こんもり丸々盛るの楽しいのです^ ^
盂蘭盆、ウラボンって、サンスクリットなので
盆、ボン♪、って音自体が外国語っぽいのですよね(笑)
仏壇も、ゴシック建築っぽいし…
お仏飯、こんもり丸々盛るの楽しいのです^ ^
盂蘭盆、ウラボンって、サンスクリットなので
盆、ボン♪、って音自体が外国語っぽいのですよね(笑)
仏壇も、ゴシック建築っぽいし…