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八朔柑




 
 八朔柑ころがりゆくは消失点         驢ノ687


 
 駄句である。






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夜の映画館は、夜の空港に似ている。

やけに明るい廊下に、人待ち顔のソファだけが、
光っている。

そして、何と言っても
重く分厚い扉の向こう、指定された席に座るだけで
別世界に行く事ができる。




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昨夜、レイトショーで観たのは、
『シェイプ オブ ウォーター』
ほぼ完璧、問題ない。
重厚で複雑だけれどコミカルな所もあり、
そして、深い。
さすがアカデミー賞だ。

半魚人と声を失った女性とのラブストーリーと聞くと、
ファンタジーか、ホラーか、と混乱するのは、
私だけではないだろうけれど、
その先入観は、不正解でもあり正解でもある。
半魚人も、聴こえるけれど話せない女性も、
その他の優しい人たちも、怖い人たちも、私であり、あなただ。

などということを、深く思う映画は、
要するにいい映画なのだ。


このひと月ほど、よく映画館に足を運んだ。

『嘘を愛する女』『空海ーKU-KAI』『blank13』

この三作に共通するのは、
私のお気に入りの色男なのだけれど、作品として良かったのは、
『blank13』である。

小さな家族の散々な物語なのだけれど、
切なくてあたたかい。
あの俳優「斎藤工」が、監督「齋藤工」として発表、
と話題の映画だが、観た後の余韻は山田洋次や木下惠介に近く、
完成度の高い作品だと思う。

完成度、などと生意気に言っているけれど、
結局は作る側の妥協の無さなのだと考えている。
人が人を描くということは、辿り着かないと分かっている
地球の中心に向かって穴を掘るようなことで、
どこで止めるか、纏めるか、が問題なのではないだろうか。

掘って掘って、その幅と深さの拡がりを地層のように見せるか。
小さな穴で見つけた小さな石ころを見せるか。
作り手の意図が、過不足なく一編の作品に詰め込まれているならば、
地層であれ、石ころであれ、そこに地球が見えるのだと思う。

齋藤工は、とても質量の大きい、ちっちゃな石ころを作って、
私たちに、捨てたもんじゃない人の住む地球、
を見せてくれた。

本当に大切なところだけをを、過不足なくきれいに切り取って、
切れ目なく繋げること、それが編集の基本なのだ、ということを
改めて勉強させてもらった映画だった。




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次に観に行く映画は、『グレイテスト・ショーマン』と、
『ザ リミット オブ スリーピングビューティー』の予定なのだが、
時間が取れるかどうか。

今回の『シェイプ オブ ウォーター』も昼間に出かけることが出来なくて
21:50から24:05 、というレイトショーに滑り込んだのだ。


久々の終電帰り。

老若男女、国籍も色々、カップルやグループ、1人の人、
仕事帰り、遊び帰り、お酒の入っている人いない人。

車両の中の人々、一人一人に人生劇場があるのだな。
なんて、当たり前のことを思うのも映画帰りだからこそである。


















Commented by mother-of-pearl at 2018-04-13 14:55
“終電”とは、そんなご用の帰り道だったのですね!!
シェイプ オブ ウォーターは前回の機内上映映画の中にあったのに見逃しました。
チャーチルもブラックパンサーも、、、。
(帰ってからThe greatest showmanを観る為に心を空けていました。)

unburroさんの感想を読み、あ〜観るべきだったなあ、と反省しています。
声を失った女性役の女優さんは「ブルージャスミン」で個性的な役を演じていたのを思い出しました。
あーやっぱり観れば良かったなぁ......

次の候補の映画も楽しみですね🎶
(今もまだ耳の奥で鳴り響いています。)
Commented by unburro at 2018-04-13 16:45
> mother-of-pearlさま

『シェイプ オブ ウォーター』は、息子(松)の、
『グレイテスト・ショーマン』は、娘(梅)の、おススメです。
面白そうな映画って、時期が重なるような気がします。
月に1つずつくらいなら、ちょうど良いのに…

映画を見た松介の彼女は、靴を買いに行き、
梅子は、映画を観たその日の内に、サントラをダウンロードして
日々、ヘビーローテーション、とのこと。
私は、『blank13』を観た後、自分のお葬式の事を少し考えました(笑)
Commented by こんの at 2018-04-14 07:17 x
小さな石ころでみせた、でっかい人生劇
そして...... ご自分のお葬式のことも
(いいなぁ) いいですねぇ
Commented by unburro at 2018-04-14 08:50
> こんのさん!

借金取りに追われて失踪した父親のお葬式が、
滑稽でだけれど、とても良いお葬式だったんです。
お葬式って、残された者にとってのものなんだ、と
しみじみ思いました。

故人の思い出を語る場としてのお葬式は大切だと思いました。
家族以外の友人知人から、こんな風に思われていたんだ、って
知ることは、面白いですね。

Commented by hanamomo08 at 2018-04-17 22:30
夜の映画館にいけなくなって七年ほど。
もっともすっかり朝型人間になってしまった今は無理かな~。

『blank13』21日から始まるので行こうと思っています。
斉藤工の監督作品なのですね。
13年ぶりに・・・・・・そんなにある話ではないけれど、最近私の友人にあったばかりなのです。
ずっと音信不通だった兄が20年ぶりにやってきたというのです。
家族の中には受け入れる人、受け入れたくない人・・・・是認受け入れる人ばかりだと思っていた私は話を聞いただけでうろたえました。
実際にあるのですね。
映画を見るときもどきどきしそうです。

 散ることは忘れることと桜花       驢ノ686
秋田は今日やっと開花、この句を噛み締めながら今年のさくらをみたいと思います。すばらしい句!ありがとう♪
Commented by unburro at 2018-04-18 18:04
> hanamomoさま

すごい、20年ですか…blank20 …
『父帰る』ではなく、兄帰る、なのですか…
事実は小説(映画)より奇なり。

フィクションとノンフィクションは、背中合わせ、
私もmomoさんも、物語の中に生きているのですね。

北国の桜は、これからなのですね。
散ることを、「潔さ」のように褒めるのではなく、
忘れることのような「軽さ」にとらえられないか、と思ったのですが
実は忘れることの方が、難しいかもしれないなあ、とか、
映画を観た後、思いました。
Commented by sheri-sheri at 2018-04-20 17:14
今日は。俳句が素晴らしい。奥が深いですね。さすがだなぁと今更ながら感心しました。人生はほんとにパンドラの箱ですね。何が飛び出すかわからない。斎藤工産という人は、役者さんとしても男性としても魅力的ですね。監督になる器の方だったんだと思わされますね。
Commented by unburro at 2018-04-21 08:17
> sheri-sheriさま

霧島連山の噴火のニュースを見るたびに
sheriさんのお家は、どの辺りだろう…と思っています。
ノンちゃん、ジョンくん、もすっかり家族ですね!
いつも、楽しくブログを拝見しています。

斎藤工という人は、面白いですね。
天は二物を与えず、ではなく、二物も三物も持っている人が
いるのだなぁ、と思います。しかし、その割に器用な感じが
しないのが良いところだと思います。うふふ…

ハッサクの駄句、褒めていただきありがとうございます^ ^
Commented by sheri-sheri at 2018-04-22 17:20
unさん、ありがとうございます。私のブログは他愛ない話ばかりでお恥ずかしいです。ご覧くださったなんて緊張しますね~。
さて、霧島連山噴火が賑やかですが、新燃えや、硫黄山までは、車で1時間半くらいでしょうか。かなり離れています。火砕流や噴石が飛んでくることはないと思いますが、桜島はそれに比べ近いです。ですが、大正時代の大噴火のようなものが起これば、降灰が何十センチと降り注ぎ、外出困難、ライフラインも分断されること間違いなしです。どうもその大正時代桜島が大噴火する前、霧島の火山が活発化したという史実があるようで、油断大敵です。ちょっと調べてみようかな~と思っています。ご心配いただきましてすみません。でも嬉しく拝見しました。ありがとうございます。
Commented by unburro at 2018-04-22 18:25
> sheri-sheriさま

お返事ありがとうございます。
噴火のこと、流石にお近くにお住まいなればこその
冷静な判断と、情報をお持ちですね。
日本中、火山やら断層やら多く地震列島である事を実感いたします。
そんな危うい島国なのに、政治家も官僚も下ネタ話で盛り上がっている、
トホホ…です。
Commented by sheri-sheri at 2018-05-01 19:57
まったくですね。もう驚くのにも慣れました~。
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by unburro | 2018-04-13 13:16 | Comments(11)