病抜け夏咲く花の種を蒔く 驢ノ635
駄句である。
病抜け(やまいぬけ)とは、文字通り、病が抜ける、という意味と、
大きな病をしたり、繰り返し病気に罹ったりした後、体質が変わった様に、
すっかり健康になる時がある、という意味との両方があるようだ。
今回は、どちらかというと前者で、風邪か治った、と言う程度の意味である。
しかし、昨年、膝の手術をしてその後、2ヵ月間のリハビリ入院をしてから、
少し身体が変わったような、健康になったような気がする。
2ヵ月の休養が、良かったのだとは思うが、そこで調子に乗ってはいけない、
と、いうことなのだろう。
ただの風邪だ、と軽く見てこじらせてしまった。
でも、ここ数日の体の軽さは、本物だ。
病抜けしたな。
と、実感していたら、
郵便受けに、珍しく私宛ての封筒が届いた。
普段の郵便物は、夫宛てがほとんどで、
私宛ては、ほとんどがダイレクトメールの類いである。
Eメールも、嬉しいけれど手紙はまた格別だ。
うほほっ、と開けてみたら、鳳仙花の種、が入っていた。
去年の夏の、ブログで 「最近、鳳仙花を見ない。」という様な事を書いたのを
憶えていて下さった友人のからの、贈り物であった。
昨年の夏の話題が、今年の春につながり、
今日、蒔いた種が、夏に花を咲かす。
こういうふうに、人はつながり、想いが届くのだな。
海山を越えて。
海山と空を越えてたどりついた初めての街で、
初めての朝を迎え、初めての店で初めての朝食を食べ、
さてさて、腹ごなしに散歩にいくか、と昨夜飲み歩いた旧市街を抜けて、
明るい方へ歩いていくと、海が広がっていた。
泳ぎに向かう人々も多い。すべてシニア層である。)
この細かい砂で円くかこまれた入り江は、高所から見ると
まるでホタテ貝の貝殻のようなので、バスク語で貝殻(ラ・コンチャ)、
ラ・コンチャ湾といわれている。
ここサン・セバスチャンは、19世紀後半にはスペインにおける夏の首都となり、
王侯貴族やブルジョワジーの避暑地として栄えたという。
確かに、スペイン内陸部は、日陰のない酷暑の夏で有名である。
海風の心地よい、北スペインは憧れの土地であったのだろう。
以降、現在に至るまで、ヨーロッパ有数のリゾートであり、
この湾を囲んで高級ホテルが立ち並んでいる。
海辺の遊歩道を歩く人々も、そこはかとなく余裕を感じさせる人々が多い。
連れて歩く犬たちも、手入れの行き届いた個性的な犬が多く、
驚いたことに、小型犬だけでなく大型犬も、ほとんどがリード無し、
飼い主の周りを、つかず離れず歩いている。
しかし、砂浜に降りると犬たちは勝手知ったる様子で、全力疾走を始めたり、
飼い主にボールや棒切れを催促して、のびのびと遊び始める。
自由である。
野放図ではなく、規律ある自由である。
見ていて不安なところが一つもなく、
窮屈なところも感じない。
アジアの島国から来た、ブルジョワジーとは縁遠い私は、
ほほう、なるほどねえ、とか、
何が「なるほど」とか分からないままに砂浜を歩いたのである。
この海辺の回転木馬、何10年、いや100年以上昔から回っているのでは、
というふうに見える。
人魚たちの下半身は、魚であり尾びれであるが、タイツをはいた足のようだ。
なるほどね、と、また思う。
何が「なるほど」なのか、分からないまま、
ひび割れた音のワルツに合わせてゆっくり回る馬車や馬を眺めていた。
少し疲れたので、ホテルに帰ろう。
昨日の夜、ぐるりと道案内してくれた息子の言葉を
思い出しながら、人の流れに沿って歩いて行くと、
市場のある広場に出た。
路上に野菜の朝市が並び、建物の中が魚や肉の市場である。
明日は、竹彦が友人を連れて来て、日本食を振舞う予定なので、
少し下調べのつもりで、ひと回りした。
元気な野菜や、活きのいい魚を見ると、こちらまで元気になる。
刺身に出来そうな魚が沢山あるのを確認して、ひと安心。
これで、午前の街歩きは終了。
午後に備えて、ホテルでひと休みである。
午後は、竹彦の学ぶ料理大学へ行って、
学生たちの作るフルコースを食べるのだ。
つづく。
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yomogi
at 2017-04-23 20:19
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鳳仙花は種がはじけるさまが面白く、よく突いては遊びました(数年前まで(笑))。花もとても素敵ですね。
「花種を蒔く」という季語を、このようにすらりと一句の中に滑り込ませることがおできになるunburroさん、いいですねえ。拍手です(^^)/
スペインのお話も興味深く拝読しています。「旧市街」という言葉に、ドキドキするほど惹かれてしまう私ですので。何故なのかは自分でもわかりません・・(笑)
「花種を蒔く」という季語を、このようにすらりと一句の中に滑り込ませることがおできになるunburroさん、いいですねえ。拍手です(^^)/
スペインのお話も興味深く拝読しています。「旧市街」という言葉に、ドキドキするほど惹かれてしまう私ですので。何故なのかは自分でもわかりません・・(笑)
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hanamomo08 at 2017-04-23 20:56
体が軽くなって、全快おめでとう♪
抜けるようなスペインの空の載った旅のお話もありがとう♪
アーティチョークが売られていますね。
ホワイトアスパラもカリフラワーも丸々と太っていますね。
市場は世界中どこへ行っても活気があるのでしょうね。
竹ちゃんの学校のお料理、楽しみにしております。
『病抜け』の句 いいなあ~。
>昨年の夏の話題が、今年の春につながり、
今日、蒔いた種が、夏に花を咲かす。
こういうふうに、人はつながり、想いが届くのだな。
繋がるって すばらしいね。
抜けるようなスペインの空の載った旅のお話もありがとう♪
アーティチョークが売られていますね。
ホワイトアスパラもカリフラワーも丸々と太っていますね。
市場は世界中どこへ行っても活気があるのでしょうね。
竹ちゃんの学校のお料理、楽しみにしております。
『病抜け』の句 いいなあ~。
>昨年の夏の話題が、今年の春につながり、
今日、蒔いた種が、夏に花を咲かす。
こういうふうに、人はつながり、想いが届くのだな。
繋がるって すばらしいね。
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saheizi-inokori at 2017-04-23 21:42
病気になったり治ったり、それは若さかもしれない、病気らしい病気にもならなくなって10年以上、かといってあちこち不具合が多くなるとそう思います。治るということがない老化現象。
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mother-of-pearl at 2017-04-24 02:01
さぞかしお疲れだったのでしょうね。
旅の前後は本当はとても疲れていても一種の興奮状態が
それを気付かせない、ということもありますので、ね。
必要なだけ時間をかけて身体が癒えていったのでしょう。
・・・・お元気になられたようで安心しました。
お料理の勉強をしている若者達が腕を振るったフルコース。
ずい分稀有な体験をなさったのですね!!!
続編が待ちきれません。
子供の頃にはどこにでもあった鳳仙花ですが、最近は見かけ
なくなりましたね。素敵な花が咲きますように!
旅の前後は本当はとても疲れていても一種の興奮状態が
それを気付かせない、ということもありますので、ね。
必要なだけ時間をかけて身体が癒えていったのでしょう。
・・・・お元気になられたようで安心しました。
お料理の勉強をしている若者達が腕を振るったフルコース。
ずい分稀有な体験をなさったのですね!!!
続編が待ちきれません。
子供の頃にはどこにでもあった鳳仙花ですが、最近は見かけ
なくなりましたね。素敵な花が咲きますように!
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こんの
at 2017-04-24 07:34
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unburro at 2017-04-24 08:05
> yomogiさま
ありがとうございます。
この句を思いついてから、改めて「種を蒔く」って、季語だったよね…
と調べ直してた私です。お恥ずかしい次第。
種から花を育てるなんて、子供が小学生の頃以来です。
うまくいくか、ドキドキです。
旧市街、って、物語が始まるような気分になりますね。
昔からの街並みが残り、変な看板やポスターなども無い旧市街。
ヨーロッパに行くと、日本のゴチャゴチャした街が、
恥ずかしくなります。
ありがとうございます。
この句を思いついてから、改めて「種を蒔く」って、季語だったよね…
と調べ直してた私です。お恥ずかしい次第。
種から花を育てるなんて、子供が小学生の頃以来です。
うまくいくか、ドキドキです。
旧市街、って、物語が始まるような気分になりますね。
昔からの街並みが残り、変な看板やポスターなども無い旧市街。
ヨーロッパに行くと、日本のゴチャゴチャした街が、
恥ずかしくなります。
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unburro at 2017-04-24 08:09
> hanamomoさま
アーチチョーク、迫力でした!
一度、自分で料理したい、と思いながら、
結局チャンスがなかったです。
ホワイトアスパラも、買って帰りたかったです(^。^)
(缶詰で、我慢しました。重かった…)
アーチチョーク、迫力でした!
一度、自分で料理したい、と思いながら、
結局チャンスがなかったです。
ホワイトアスパラも、買って帰りたかったです(^。^)
(缶詰で、我慢しました。重かった…)
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unburro at 2017-04-24 08:55
> saheizi-inokori様
そうなんですね〜
我が家の刀自様も、家族全員が順番に風邪を引いたりしても、
独りだけ元気、っていう事が多いのです。
101歳でしっかり身の回りの事が出来る刀自様を見ると
丁寧なメンテナンスを欠かさずに、公道を走るクラシックカーを、
いつもイメージします。
だからこそ、小さな病気に気を付けないといけませんね。
どうぞ、いつまでもお元気でいて下さいね‼︎
そうなんですね〜
我が家の刀自様も、家族全員が順番に風邪を引いたりしても、
独りだけ元気、っていう事が多いのです。
101歳でしっかり身の回りの事が出来る刀自様を見ると
丁寧なメンテナンスを欠かさずに、公道を走るクラシックカーを、
いつもイメージします。
だからこそ、小さな病気に気を付けないといけませんね。
どうぞ、いつまでもお元気でいて下さいね‼︎
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unburro at 2017-04-24 09:27
> mother-of-pearlさま
そうなんです。
祭りの後のような脱力感と風邪のダブルパンチだったようです。
仕事と家事の日常業務で手一杯で、五七五を考える余裕が出るまで思った以上の時間がかかりました。
料理と食材やワイン、サービスや経営など食に関連する勉強に特化した
面白い大学なのです。息子はこの大学の研究科のようなコースにいます。
次回を、お楽しみに!
そうなんです。
祭りの後のような脱力感と風邪のダブルパンチだったようです。
仕事と家事の日常業務で手一杯で、五七五を考える余裕が出るまで思った以上の時間がかかりました。
料理と食材やワイン、サービスや経営など食に関連する勉強に特化した
面白い大学なのです。息子はこの大学の研究科のようなコースにいます。
次回を、お楽しみに!
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unburro at 2017-04-24 09:30
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at 2017-04-24 11:29
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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unburro at 2017-04-24 14:02
>鍵コメmさま
夏の花は、活発な女の子のようで、眩しい感じ!
ですね。
今年の夏は、何をしているだろう…
実は、全く予想出来ない…とか、思っています。
種を蒔く、というのは、花が咲く時、実がなる時、など
未来を予想することなんですね、ちょっと心配(笑)
野菜の朝市、売っているオバちゃん、おっちゃんが、
皆よく日焼けした人たちで、多分作った農家の人みたいで、
元気な人が作る野菜は元気なんだな!と思いました。
夏の花は、活発な女の子のようで、眩しい感じ!
ですね。
今年の夏は、何をしているだろう…
実は、全く予想出来ない…とか、思っています。
種を蒔く、というのは、花が咲く時、実がなる時、など
未来を予想することなんですね、ちょっと心配(笑)
野菜の朝市、売っているオバちゃん、おっちゃんが、
皆よく日焼けした人たちで、多分作った農家の人みたいで、
元気な人が作る野菜は元気なんだな!と思いました。
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sheri-sheri at 2017-05-04 12:59
旅に出ると色々な発見や感慨が生まれますね。私もメルボルンへ親子で旅した時、飼っているわんこの名前のついたシェリー岬というところに行くと、unさんがお書きになってらっしゃるような光景にでくわしました。リードをつけていない様々な犬たちが、お行儀よくそして楽しげに生き生きと飼い主のそばで走ったり歩いたりしているのです。飼い主の人々もゆったりと落ち着いてまるで別世界でした。今も懐かしく思い出します。しかし、体調も以前よりぐっといい方向に向かわれてほんとによかったです。
俳句もいつも素敵なものばかりです。
俳句もいつも素敵なものばかりです。
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unburro at 2017-05-04 17:53
> sheri-sheriさま
ありがとうございます。
私も犬も猫も、嫌いではない、
どちらかというと好き、なのですが、
ちゃんと躾をする自信がないので、
友だちのワンちゃんなどと遊んで喜んでいます^ ^;
ありがとうございます。
私も犬も猫も、嫌いではない、
どちらかというと好き、なのですが、
ちゃんと躾をする自信がないので、
友だちのワンちゃんなどと遊んで喜んでいます^ ^;
by unburro
| 2017-04-23 15:34
| 旅・スペイン
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Comments(14)