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小春日




 小春とて隙も見せずに石畳          驢ノ605




 駄句である。





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こんなほのぼのと暖かい日は、
悲しいことなどないように、
まあ、そんな事など無理なのだけれど、
ちょっと祈ってみたりする。



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桜の葉が、色づき散り始めた。
外来リハビリの病院へ通う道である。

このひと月、家から徒歩で十五分ほど、車の少ない近道を探して通っている。
初めは、かすかな坂にも敏感になり、杖を突く場所を探しながら、
下ばかり見て歩いていたが、一週間前から杖を手放し、
何とか、木を見たり、空を見たりして歩けるようになった。

家事や仕事も、手術前と変わらないペースで出来るようになってきたが、
その分、膝以外のあちこちに無理が来ている。
週2回のリハビリは、そのメンテナンスに時間の半分を費やしている。
残りの半分が、普通に歩くための訓練である。

最近、特に不調なのが、膝手術した左脚の足首と足裏、そして足の甲である。
妙に痛い、赤く腫れてしまう。
この腫れや浮腫み、痛みの様子を見ながら、理学療法士君がマッサージしてくれる。
これが、はっきりいって極楽である。



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靴下を脱いで、寝転んで、脚を預ける。
彼の長い指が、強くあたたかく、裸足の足を包む。
その指が、もつれた筋や筋肉、神経などを探りほぐしてゆくのだ。
こっそり、足元の彼を見る。
柔らかくウェーブのかかった前髪が、細面の額にかかる憂い顔の青年である。
その表情は、笑いそうになるくらい真剣である。

彼は、足裏の内側の筋肉の迷路に思考を飛ばして、指先で辿りながら、
所々の暗闇に潜む、ちいさなモンスターを誘き出し、退治してゆく。
壊れた回路を修復しながら、流れを取り戻すことに集中しているようだ。

足の甲をさすり伸ばされ、足裏を押し揉まれ、足首を掴まれ引っ張られ、
その心地よさに、ウトウトしていると、
「ちょっと、力を入れて、開いて。」 とか
「親指を内側にグーをしながら、膝を伸ばして」とか
柔らかい声で、ささやかれる。
「はい、グー、パー。グー、パー。いいですねえ。」
「もっと、土踏まずの外側を意識してください。」
「はい、じょうず、です。あと10回、グーパー。」

もう、言われるがままに、グーパー、である。

私は、魔法の国の悪い魔女、美しい王子に魔法をかけて操り、
疲れた足を、揉ませて遊んでいるのだ。
次は、何をさせようか、ナメクジなどに姿を変えて、うふふふ。

などと、夢見心地で、グーパー、グーパー、である。


しかし、そんな至福の時間はあっという間に過ぎ、
その後は、脚にボールを挟んで、屈伸したり、
壁際でふらふら片足立ちしたり、かっこわるい筋トレの時間に移る。

悪い魔女から、鈍くさいオバサンに急降下である。


リハビリからの帰り道は、明らかに足が軽い。
歩幅も広がり、地面を蹴る足裏に力が入るのがわかる。
走れそうな気分になってくる。

しかし、それが続くのも翌日の昼ごろまで。
仕事に追われて、腰を屈めたり、ソファーで転寝している内に、
姿勢が崩れてしまうのだ。また、足が腫れてくる。
しかし、筋肉には矯正した記憶も残っており、全てが2日前に戻るわけでもない。

二歩進んで、一歩戻る。
三歩進んで、二歩戻る。
そんな感じで回復している。

魔女の時間、オバサンの時間、行ったり来たりしながら。

である。















Commented at 2016-11-16 07:32 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by pallet-sorairo at 2016-11-16 09:14
筋肉って正直です。
やりがいあるでしょう?!
魔女の気持ちになれる?ならなおさら(^^。
すたすた歩けるのももうすぐですね、応援してます!
Commented by mother-of-pearl at 2016-11-16 14:12
小春日和!もやっと暖かい道を歩きながらunburroさんのことを想っていました~!

杖無しですか!辛抱強く入院なさっていた成果ですね。
そうそう!私も退院後手術した側の足裏の親指の付け根にボールのように腫れ、これは何?と不安になりました。
つい最近まで、反対側の足を含めて様々な筋肉痛が発生しては、
『おお、今度はそこ?』と負担に耐えて頑張っている我が身を労り続けていました。

この2年は、身体のあちこちの“総監督”になった気分で宥めたり労ったりしてきました。

用心しながら大胆に! ・・復活を目指してくださいね!!

王子さま、かぁ~  いいなあ~(^.^)
Commented by unburro at 2016-11-16 15:10
>鍵コメkさま

一週間のご無沙汰でした!
と、書きながら気付きました。あっという間の一週間。
夏に毎日更新していた事が、嘘の様です…
Commented by unburro at 2016-11-16 15:17
> pallet-sorairoさま

はい!筋肉は、心や脳より、ずっと正直ですね。
頑張ったら、強くなります。
でも、さぼったら、弱くなります…

魔女の気持ちが、頑張るモチベーションになります(笑)

すたすた歩くことの、素晴らしさ!
もたもた歩くことの、もどかしさ…
両方を知って、少し賢くなった驢馬であります。
Commented by unburro at 2016-11-16 15:30
> mother-of-pearlさま

本当に、もやっと眠くなる小春日和でした。
想っていただけていた、なんて、照れますね…」

mother-of-pearlさんも、足裏が腫れましたか!
もうポンポン‼です。
でも、このリハビリ、マッサージのお蔭で徐々におさまってきています。
患者にとっては、『おお、今度はそこ?』という驚きですが、
PTにとっては、想定内の、よくある症状なのでしょうね。
同様に、マッサージも、彼にとってはルーティン・ワークなのでしょうが、
私にとっては、夢心地なのです。

この術後の困難を、自らの総監督として乗り切られたmother-of-pearlさんは凄い!
私には、オトコマエがいなければ、乗り越えられない試練です^^;
Commented at 2016-11-17 07:35 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by unburro at 2016-11-17 17:08
>鍵コメ07:35さま

沈没しないで下さい。
少し沈んで、ゆっくり、浮かび上がってきて下さい。
ゆっくり、お待ちしております。
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by unburro | 2016-11-16 01:33 | Comments(8)