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驢ノ551ー600




八月

 落蝉が祭囃子を聞いている         

 伝えるか伝えぬべきか盆支度       

 里恋し人が恋しと盆の入り  
      
 肝心を話しそびれて盆の客       

 迎えたり送ってみたり盂蘭盆会        

 闇深し冷たき色の花火かな        

 濡れそぼつ五山送り火南無と燃え     

 夜半を過ぎナースコールも秋の音         

 コウロギが電車に乗ってと友が云う        

 カメムシや飛んで皆々姦しき      

 カマキリが大義背負うて鎌を振る         

 おさなごの頬に花茣蓙織り模様       

 窓暮れて二本寄り添う松葉杖        

 松葉杖二本を足して脚六本アタシ鳴かないキリギリス      

 あれここに苦瓜熟れて夏がゆく         

 夕烏夏も老いたり揚げ豆腐       

 秋茄子とやたらと笑う老女かな        

 日傘ゆくクレソントマトモッツァレラ     

 シャンパーニュ夏が背中を見せている      

 桐一葉ふうわり落ちよ車椅子 
        
 夏終わる色なき雨が蒼々と       

 触れずとも側に置きたし秋薊         
 


九月

 待ち人の声の軽さよ秋茜      
    
 落日や洗い終えたる金魚鉢       

 無花果や豊饒という乳の滴る       

 秋の蚊の小指を刺して消えにけり      

 梨ひとつ雨の匂いの見舞客         

 足弱の一歩をほめよ杜鵑草        

 心映え象にすればこの林檎  
          
 朝の雨二日酔いかな酔芙蓉            

 雲染まる豆腐の汁と菊膾       

 石の家燠火の肉に黒胡椒
        


 忘れたる歌に涙や秋は来ぬ
       


 うっかりと独り色づく公孫樹あり       

 雨降れば雨を弾いて茄子畑        

 まるきもの全てうつくし良夜かな
      
 

 十六夜や源氏名などを考える        

 煙雨切る刃の如し秋柳      
   


 彼岸花茎まっすぐの靭さかな     
  

 床上げは秋刀魚に酢橘と茸汁 
     
  
 杖の音さてと止まりぬ秋彼岸       
 


 老いたるも老いたればこそ菊一輪         
 




十月

 秋実る命の果てを知らぬまま
         
 十月に入りて冷たき豆腐かな         

 わが心うつして忙し秋の蝶         

 をさなごが人恋うほどの初紅葉          

 草の実の豊作祝う雀かな      

 光るものみな銀になる十三夜       

 ぬれ落ち葉ふと蝶に見え踏鞴ふむ       

 萩見れば萩ゆれる萩の道         

 



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退院してから、あっという間にひと月である。
入院中に毎日、駄句をアップしていたおかげで、
あっという間に、600句になってしまった。

あっという間、ばかりである。

あっという間、という時の、「あっ」とは何だろう。
驚き、なのか、一瞬、なのか。
などと、今さら考える。
きっと、ネットで調べれば、
あっという間に、判るのだろうが、ぐっと我慢して、
宙に浮かして眺めてみる。

「あっ」
を少し離れて見てみれば、発見にも似ている。
しかし、失敗の匂いもする。

「あっ」
と言いかけて、吞み込むこともある。
気付いてしまったけれど、見なかった振りをしよう、
というような時だ。

「あっ」と思った瞬間に「あっ」と言えるのは、
心が素直で、屈託が無い時だ。
子どもの心は、いつも「あっ」に満ちている。

しかし、私は「あっ」というのが下手な子だった。
反射神経が弱いのも一因であるが、
「あっ」と思っても、口に出す前に「なぜだろう」と考えてしまって
立ち止まってしまう時も多かった。

瞬間に「あっ」と驚いたり、喜んだり、出来る子の方が、
可愛気があるのは、間違いないので、ちょっと羨ましかった。



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最近は、「あっ」と思ったら、写真を撮ることが多い。
写真は瞬間を切り取る魔法だ。
猫じゃらしも、風も、フェンスも、
とりあえず、撮っておけば、後になってからゆっくり、
なぜ、これが美しいと思ったのだろう、とか考えることが出来る。

俳句もブログも、「あっ」を後から眺める作業である。
やっぱり、私に向いているのだろう、と思う。

もう暫く、続けてみようと思う。



どうぞよろしくお付き合いのほど、お願いいたします。





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Commented by こんの at 2016-10-26 07:28 x
>最近は、「あっ」と思ったら、写真を撮ることが多い。

あぁ、嬉しい!ですねぇ 仲間が増えた気分(笑)
Commented by unburro at 2016-10-26 14:38
>こんのさん!

っふふ、こちらこそ仲間に入れていただいて、
嬉しいです!
今後とも、よろしくお願いいたします‼︎
Commented by mother-of-pearl at 2016-10-27 12:35
あっという間 にも色々な長さの違いがありますね。
過ぎてしまえば、自分が生きてきたこの年月でさえ、あっという間。

何かを無くしてしまう前に何故か瞬間的に“あ”と思いが浮かぶこともありますね。

子供の時、父に尋ねたことがありました。
『あ、う、え、お、と思うことはあるけど、い、と思うことはないねえ。』と。
答えに窮した父はただ『黙って食べなさい!』と言った気がします(^.^)

ブログという場があるお陰でガラケーででも写真を撮る意欲を貰えています。
私の場合は『おっ!』と思う瞬間ですが。

これからもunburroさんワールドを楽しみにしています!
Commented by unburro at 2016-10-27 19:15
> mother-of-pearlさま

「いっ」と、思うこと…
確かに、ないですね(笑)
楽しい質問、賢いお嬢さんに、お父様もお手上げですね〜

あ、
「痛い‼︎」と、言いかけて、声が出ない「いっ…」という
場面を、思い付きました。
座卓の脚に、足の小指をぶつけた時、とか。
しかし、これは「思い」というより、声ですね ^ ^;
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by unburro | 2016-10-25 18:14 | 駄句反省会 | Comments(4)