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蒟蒻





薄々と蒟蒻削いで木の芽味噌
     驢の505



駄句である。




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手作りの蒟蒻を頂戴した。
蒟蒻芋だけで作った蒟蒻である。

蒟蒻とは、こういうものだったのか、と驚いた。


本物の葛粉だけで作った葛餅、
本物の蕨粉だけで作った蕨餅、
かつて、そんな本物の葛餅や蕨餅を食べた時にも、同じ驚きがあったけれど、
今日の本物の蒟蒻には、もっと驚いた。

なぜ、葛餅や蕨餅の時より驚くのだろうか、と
考察した
そして、ひとつの理由にたどり着いた。

それは、蒟蒻というものを、ほかの食べ物より低く見ていたのではないか、
ということだ。
元々、蒟蒻に「美味しさ」を求めていなかったのではないか。
葛餅や蕨餅に対する時とは、期待の大きさが違うのではないか。
そして何より、葛餅などのお菓子は上等で、常備菜に使う蒟蒻は下等な食べ物だ、
と、考えていたのではないか。

蒟蒻は好きだ。
おでんに蒟蒻は欠かせない。
豚汁、炊き込みご飯、筑前煮、どれをとっても蒟蒻がなければ成立しない。
しかし、蒟蒻だけ、蒟蒻単品での価値について考えていなかった。

もちろん、 ひと口大の蒟蒻を、良い胡麻油でしっかり炒めて、
醤油と七味唐辛子を絡めた一品などは好物である。
我が家では「ピリ辛こんにゃく」と呼んで、出来立てを争って食べる。
一晩おいて一層味が染みたものは、お弁当の名脇役である。

しかし、これも胡麻油と醤油、七味唐辛子の助けがなければならぬ、
蒟蒻一人では、心もとないと思っていた。

刺身こんにゃく、という蒟蒻も知っている。
何度も食べたことがある。しかし、さして感動したことは無い。
ああ、刺身状のこんにゃく、と理解しただけである。
酢味噌や、生姜醬油を味わっただけである。

私は、今まで、蒟蒻に独立した美味さを期待したことがなかったのだ。

迂闊なことであった。



蒟蒻_b0290638_22575880.jpg



新緑の山里から届いた蒟蒻は、柔らかいのに腰があり、素朴であるが上品である。
味、は無い。
それは、水に味が無い、というのと同じ意味で味は無い。
しかし、美味い水というものがあるのと同様に、美味い蒟蒻の味がある。

味は水の如しであるけれど、食感は唯一無二である。
まず、その舌触りの柔らかさに驚いた。
官能的である、しかしその官能は余りにも自然なので、
自分の唇や舌が、自分自身にとって官能的でないように、
何の違和感もなく、口に入り、少し噛んだだけで、喉を通り過ぎる。

その肌も、工場で作られた製品のようにツルリとしていない。
よく研いだ刺し身包丁で、どんなに慎重に切っても、
その断面には、柔らかいざらつきがある。
それが、なにやら言うに言われぬ官能なのである。
どこか敏感な部分を、そっと舐めたような、である。

などと、へらへらと感心していても仕方ないので、
舌触りを生かす為に、刺し身包丁は仕舞って、
切れ味の悪くなった普段使いの菜切り包丁で、不揃いに薄々に削いだ。
切る、ではなく、削ぐ、気持ち。
そして、
私の作った料理にする為に、木の芽味噌を添えてみた。
添えてみたけれど、やはり、無用であった。

このひとひらに、木の芽味噌は過剰であった。


生醤油一滴、でよかったのだ。


というわけで、実際は木の芽味噌は皿の端に追いやられてしまったが、
俳句にするには季語がいる。
蒟蒻は季語ではないようなので、木の芽味噌、を残した。


作為、である。






蒟蒻_b0290638_22585724.jpg


今日の写真は、4月の旅で泊まった六日町の宿。
廊下の一角に、このような土人形たちが飾られていた。
それぞれの出自などの説明はなかったが、皆、時代を感じる良い人形たちであった。













Commented by こんの at 2016-05-20 09:55 x
エッセイ読んで、ドキッ!と驚き
流石だなぁ と(笑)


Commented by こんの at 2016-05-20 10:00 x
あぁ そう言えば、「上善如水」という銘酒がありましたですねぇ
Commented by unburro at 2016-05-20 11:58
>こんのさん!

へへ…流石にアレな驢馬でございます^^;

「上善如水」は、全国的に有名なお酒ですよね。
名前も良いし。
この前に旅した新潟魚沼、湯沢温泉の蔵元なのですが、
現地ではほとんど見かけませんでした。
県外用?なのかしら⁇と驚くほどでした。
私は、なかなかに美味しいお酒だ、と思っているのですが…
Commented at 2016-05-22 07:13 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by unburro at 2016-05-22 07:50
> 鍵コメさま

的外れ、なんて、とんでもない。
実は、けっこう気にしていました(笑)

いつも、素敵なお気遣いありがとうございます。
山あり谷あり、私らしくやって行こうと思います。

本当に、ありがとうございました(^_^)
Commented by sheri-sheri at 2016-05-28 16:27
土人形・・・なんともいえない風情ですね。熊本の鯛車という木ででた玩具も見えますね。
Commented by unburro at 2016-05-28 17:39
> sheri-sheriさま

2枚目の写真の上の段の赤い魚ですね!

そうなんですか、知らなかったです。
すごく面白い顔と形ですねえ‼︎
昔からこのデザインが引き継がれている事に感動します。
誰も、もうちょっとスマートに小綺麗にしよう、とか思わなかった所が、
偉いなあ〜


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by unburro | 2016-05-19 23:40 | Comments(7)