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終点も始発も途中春の駅              驢ノ479



駄句である。 






いつもの駅のいつもの改札口なのに、
この胸の高鳴りは、どうだ。

確かに、背負った荷物は少し大きめだけれど、
財布の中身も、少し多めだけれど、
真っ赤なダッフルコートも、ラバーソールのワークブーツも、
ひと駅向こうの、区役所に行く格好と同じなのに。

心拍数が上がっている。

この駅から大きな駅まで、一度の乗り継ぎを挟んで15分ほど電車に乗り、
それからは、夜行バスだ。

夜の駅の改札口を出て、長距離バス専用のバスターミナル。
大きなトランクルームを持つ背の高いバスが、大きな水槽の中の海獣のように
するりするりと、すれ違いながら出入りしている。
バスの前面、それぞれの行く先を示す行先表示板を読みながら
自分のバスを探して乗り込む。

銀河鉄道ではないけれど、遠い所へ行く時は、夜に旅立つのが好きだ。
夜の空港、夜の港。
見送りなどいらない、旅は1人で、心細いくらいがちょうど良い。



夜行バスの良い所は、眠っている間に目的地に着くことだ。
ちょっとした「どこでもドア」である。
価格も安い。
悪い所は、遮光カーテンで窓が締め切られ、車内も真っ暗なこと。
車窓を流れる夜の街も、闇に沈む山影も見えない。
ただ、タイヤを回転させるエンジンの音と振動、窓の向こうの風の音だけが、
私が移動している証明だ。
相当、つまらない。
眠るしかない。

そして、眠った。

長いトンネルを通る気配で、目覚めた。
トンネルの中のオレンジのランプの色が、厚いカーテンの隙間から漏れている。
ごうごうという、トンネルの音と、オレンジ色の光は終わらない。
長いトンネルだ。

そう、

国境の長いトンネルを抜けると

雪国であった。



駅_b0290638_01555093.jpg



トンネルを出てすぐ、休憩の為に止まったパーキングエリア。
小雪が舞い、足元や屋根に数センチの雪。

新潟に入ったようだ。

















Commented by こんの at 2016-03-16 07:42 x
今日のブログの一部を「天童の家」で使わせてもらいました
Commented by pallet-sorairo at 2016-03-16 08:24
>真っ赤なダッフルコートも、ラバーソールのワークブーツも、
unburroさん かっこいい!
そして「どこでも窓」でなく「どこでもドア」。
夜行バスから降りる一歩目は
なんだか月に降りた人類初の一歩目のようなわくわく感です。
続きが待たれる(^^ゞ
Commented by unburro at 2016-03-16 09:49
> こんのさん!

仙山線、いいですね。
乗りに行きます。きっと!
Commented by unburro at 2016-03-16 10:03
> pallet-sorairoさま

真っ赤なダッフルも、ワークブーツも、
嘘ではないのですが、想像していただくほど…
かっこ良くないです^^;
50代から60代までの範囲で、年齢不詳のオバさんです。
ウッカリした人が、遠くから見ると40代後半に見えるけれど、
元気な70代にも見えるかな、という感じ(笑)

おっしゃるとおり、月面への第一歩!の気持です。
寝ている間に、ワープしていく感じです。
狭苦しい感じも、宇宙船と思えば我慢我慢…
Commented by mother-of-pearl at 2016-03-16 12:08
>旅は1人で、心細いくらいがちょうど良い。

本当にその通りですね!それで私も(ほぼ毎回)全く独りの小さな旅を加えます。

全神経を研ぎ澄まし、自分のペースで決断を重ねていくのが醍醐味ですね!

わらしべ長者のような出逢いの膨らみが楽しみでなりません!

・・それにしてもunburroさんの、様々な瞬間の心模様をかくもありありと再現できる才能に感嘆し通しです!
Commented by unburro at 2016-03-16 16:18
> mother-of-pearlさま

感嘆とは、過ぎたお言葉をいただき、お恥ずかしい…です。

一人旅、というと「え〜っ⁉︎なんで⁇」と驚かれる事が多いのですが、
同志を得て、心強い限りです。
1人だからこそ、出会いが多いのだと思います。
今回も、様々なタイプの渋い殿方と…楽しい色々…
が、ありました(^.^)/*

Commented at 2016-03-17 16:37 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by unburro at 2016-03-17 18:52
>鍵コメmさま

そうそう、玄関を一歩出るところから、旅人気分。
どんなに幸せで、充実した日常であっても、
時々、そこから、一歩踏み出したくなる…
ワガママかもかもしれませんが、これが無くては駄目なのです。

mちゃんも、一緒だねえ〜、うれしいです。
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by unburro | 2016-03-16 02:07 | 旅 八海山 | Comments(8)