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子雀



子雀が背伸びして見る朝の膳
              驢ノ163


駄句である。







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今日は、私を含め家族の出入りが激しく、ゆっくり子雀を放してやる時間がとれない。
せめて、朝のうちに飛ばしてやろう、と
朝食前に、鳥籠の扉を開けた。

鳥籠に入れられた一週間ほど前は、出口が分からずに
扉以外の柵の部分に体当たりして、びっくりしていた子雀も、
最近は、奥の止まり木から、開いた扉へ一直線に飛んで出るようになった。

居間の電燈を越え、食器棚をかすめて、台所で珈琲を点てる私の肩に着地する。
傍らのオーブントースターがチンッと鳴り、扉を開ける。
こんがり焼けたチーズトーストを取り出そうとすると、
肩から指先まで一気に駆け下り、
溶けたチーズがグツグツいっているパンに飛び乗ろうとする。

馬鹿っ
コラッ
焼き鳥になりたいのかっ

と、払いのけてチーズトーストを皿にのせテーブルに運ぶ。
当然、子雀も慌てて付いてくる

皿をテーブルに置くと、止める間も無くチーズトーストに飛び乗ってしまう。

嗚呼、少し冷めて、火傷するほどではないと思うが、
嗚呼、溶けたチーズに、小さな雀の足跡が付いてしまった。

良く見なくては気がつかない程の、小さなへこみ、なのだが
人間の赤ん坊が、色紙に手形や足形を押す様に、
子雀の小さな足跡は、
所々茶色の焦げ目のついた黄金色のチーズの上に確かに残された。

急いで手近にあるipadをカメラにしてシャッターを押すが、
微かな足跡は、冷めて行くチーズと共に消えてしまったようだ。

角度を変えたり、光の具合を調節したりしてシャッターを押している私の苦労など
知らぬ顔で、子雀は大きな御馳走に夢中である。
耳の部分から攻めて、小さなパンくずを撒き散らし、
嘴にまとわりついたチーズを、皿の縁でこすり落としたり、
大忙しである。

おいおい、お前の朝飯ではないよ。
ちょっとのいてくれ、と言って聞く相手ではない。

チーズの無い部分をちぎって少し遠くに投げてやる。
トーストの欠片は、テーブルの上を滑ってゆく。
子雀は大慌てで追いかけ、嘴で咥えて振り回す。
何とか食い千切ろうとしている。
いや、遠心力を利用して、パンを振り回し、
口に合う大きさに割ろうとしているのだ。

自分の頭くらいある大きさのパンの端をしっかり咥えて、
翼を羽ばたかせ全身で跳ねながら、首を振り、
嘴に咥えたパンを、テーブルに打ちつけたりしている。
その甲斐あり、パンは三つほどにちぎれて、その内の一つは何とか子雀の
食べられる大きさになった。
上手いもんだ、と見ていると、子雀は食べやすい小さな欠片ではなく、
大きいほうの欠片を咥えて、またまた慌てて、飛び立った。

咥えたパンの大きさにバランスを崩しながら、必死で翼をばたつかせ
少しふらつきながらも、テーブルの下に着地した。
そこで、やっと安心したようにパンくずをつつき始め
見る間にぺろりと食べてしまった。

一週間程前までは、ストローのような給餌器でお粥の様にした粟や
すり餌を食べさせていたのに。
掌の上でぴーぴーと黄色い口を開けて、
食べさせて貰うのを待っていただけなのに。


再びテーブルに戻ってきた子雀は、さっきの残りのパンも同様に食べ尽くしてしまった。

次は、すっかり冷めてしまったチーズトーストを食べる私の手元、口元を狙っている。
急いで、読んでいた新聞で顔を隠す。

丸い身体を、精一杯伸ばして背伸びしてきょろきょろしている。
ちゅん、と啼く。
ぴぴぴ、と啼きながら、ちょんちょん歩く。
少し歩いては、また背伸びしている。

ちちちっと啼きながら、ついに新聞に飛び乗って来る。
新聞を乗り越えて、肩に止まり、耳から頭によじ登り
ついに、顔を滑り降りて、トーストを食べる私の口元をつついてくる。

その必死さに負けて、またパンをちぎってやる。

そんな今朝の風景。

これから、こんな朝が続くのだろうか。



悪くない、と思う私が居る。




























Commented by こんの at 2014-05-24 10:08 x
野の熊や猿たちは、野になる実などより、人間が作る作物が栄養豊富なのを識っているという
Commented by unburro at 2014-05-24 10:37
こんのさん!
むむっ 成程。
粟などの「小鳥のえさミックス」より、チーズトースト・・・
小松菜より、ブロッコリーを好みます。確かに栄養豊富ですね。
さっきは、台所の俎板の上で、リンゴの芯をつついていました。
Commented by wawa38 at 2014-05-24 14:28
こんにちわ!wawaです。コメント有難うございました。
おもしろく、小気味いい俳句ですね。毎回「駄句である」というのが、クスリと。

ずっと以前、インコを飼っていたことがあります。なんと住所電話番号、名前を言ったのですよ。信じなくてもいいけれどホントです(^_^)
Commented by unburro at 2014-05-24 22:24
wawa様
ようこそ!お待ちしておりました!
いつも、こんな駄句から始めております。

インコのお話、信じますとも。
鳥類の可能性を、最近の人々は軽く考えすぎているのではないか!
と、思います。
私の小さい頃は、伝書鳩なども流行していて、鳥は賢い生き物だという知識がありましたが、最近は携帯電話・スマホの影響なのか小動物と共存する生活というやつが、ないがしろにされている気がします。

ともあれ、今後ともよろしくお願いいたします。
Commented by saheizi-inokori at 2014-05-25 11:22
私も小雀とトーストを食べているような気分になりました。
サンチ(犬)は私が寝転がるのを見澄まして走り寄って顔を舐めます。
トーストに手を伸ばすが早いかすっ飛んできて正座して欠片をねだります。無言というのがスズメと違います。
Commented by unburro at 2014-05-25 14:42
saheizi様
置いてある餌より、人が食べている物を欲しがる、動く人に付いて回る、という傾向が日に日に強くなるようです。
群れて生きる鳥だからなのかな、と思ったり、厳しくしないと益々放鳥できないぞ・・と心配になったり、悩ましい事です。
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by unburro | 2014-05-24 00:19 | 子雀  | Comments(6)