人気ブログランキング | 話題のタグを見る

紫陽花





 紫陽花やいくら泣いても水の玉         
驢ノ694



 
 駄句である。






紫陽花_b0290638_23460157.jpeg




紫陽花の季節、むかしむかし、あるところで、
私は、土砂降りの雨の中、髪もTシャツもジーンズも、
下着も靴下も何もかも、水から上がったように濡れながら、
そして、泣きながら歩いていた。
雨が涙を隠してくれるので、思う存分泣いていた。

冷たいのが雨、温かいのが涙。
頬を伝う時は区別がついているのだが、唇の辺りまで来ると
もう分からない。

夕暮れ近くなり、どんどん体温が奪われてお腹が痛くなってきて
トイレに行きたくなって来たけれど、
こんなにびしょ濡れでは、喫茶店とかお店に入ることもできず、
探しあてた公園にも、公衆トイレはなく、
力尽きてもたれかかった大きな木の下で、失禁してしまった。
冷たく濡れて脚に張り付いたジーンズの中に、温かいおしっこが溢れて
とても気持ち良かった。
膀胱が空っぽになってスッキリすると、泣きたかった気持ちまで
洗い流されたようで、いつのまにか涙は止まっていた。

夜の入り口、街灯が点く頃になっても雨はシャワーのように降り続け、
私を服ごと洗い清めた。
身体が軽くなり、妙に清々しくて、下宿の玄関にたどり着いた時には
失禁した事を忘れるくらいだった。




紫陽花_b0290638_23452471.jpeg


なんでそんなに泣いていたのか。
そりゃあ、恋、だったはずなのだが、
詳しいことは、なんとまったく、憶えていない。
当時の恋人とは、この梅雨の時期を過ぎても付き合っていたので、
致命的な事件、ではなかったのだろう。

二十歳そこそこの小娘が、梅雨の走りの大雨の如く涙を流すのは、
所詮、自分を憐れんだり、悔しがったりの独り相撲の挙句だ。
自分自身のどうしようもない弱さに耐えきれず、涙が溢れる。
泣いて泣いて、心を捻り絞るように泣くのだ。
で、
私は、お漏らししてしまったわけなのだが、
今さら、そんな恥ずかしい昔を思い出し、その上、ブログに書く気になったのは、
なぜだろう。

朝昼2回見るほどに、気に入っているNHKの朝ドラの主人公の女の子が、
ポロポロ、ボロボロ泣いているのが可愛いからかな。


そして、もうすぐ新しいステージへと旅立つ竹彦を見るにつけ、
もう、子ども達の前に立ち、強い、いや強そうな背中を見せる必要はないのだ、
と、肩の力が抜けた実感もある。




紫陽花_b0290638_23454291.jpeg



まだまだ、墓場にまで持って行こう、と心に決めている恥ずかしいこと、
後悔していること、そして、悪いこと、は色々あるけれど、
あまりたくさん抱えていると、重量オーバーで三途の河の渡し船に
乗れないと困るかな。

年寄りが若者に、自慢話や失敗談をすることを、
少々鬱陶しいことだ、と思っていたけれど、
それはある種の懺悔なのかもしれない。

と、今、少し思った。





紫陽花_b0290638_23450463.jpeg
(ワインやビールの空き瓶と空き缶は、梅子や松介の友達も集まって、
我が家で竹彦の歓送会をした時のもの)




















Commented by saheizi-inokori at 2018-06-15 09:45
そんなに泣けるって素晴らしい、私はなかったなあ。
ワインのラベル「首提灯」ではなくて「首団扇」かな。
Commented by pallet-sorairo at 2018-06-15 10:39
>泣いて泣いて、心を捻り絞るように泣くのだ。
人生のどこかで、そんな風に泣いてみたかったな…。
Commented by unburro at 2018-06-15 14:29
> saheizi-inokori様

ある時期、ある状況、そして雨。
化学反応のように組み合わされ、心身のバランスが崩れ
異常な大泣き状態になったのだと思います。
一種の物狂いなのかもしれませんね。

ワインのラベル、面白いですね。
これは映画監督のフランシス・コッポラのワイナリーのワインで、
ディレクターズカットと名付けられているシリーズです。
アニメーションの原型であるゾートロープのフィルムのデザイン、
ということです。他にも悪魔が玉乗りしている絵とかあって洒落ています。

落語の「首提灯」、シュールな噺ですね。
ダンテの「神曲」の地獄篇に、切られた自分の首を掲げる人物が登場するらしい
ですけれど、このゾートロープと関係あるのでしょうか…?
サロメが持っているのは、自分の首じゃないし…
Commented by unburro at 2018-06-15 14:46
> pallet-sorairoさま

涙が涙を呼んで、止まらなくなる。
泣いている自分が、可哀そうで情けなくて、
また、泣けてくる。そんな負のループにはまってしまう。
パニックのようなものだったのかもしれません。

元々、泣き虫のキャラではないのですが、
あの一時期、赤裸の因幡の白兎のように、
全身ピリピリしていたような記憶があります。
はた迷惑なことです。
青春ってヤツだったんでしょうね…

あの時、一生分泣いたのかな…
あれから40年、ジワっと涙がにじむ、ポロッとこぼれることはあっても
ポロポロと泣いたことがない、です。
大人って、そういうものでしょうか…?
Commented by こんの at 2018-06-15 17:13 x
   独り相撲の挙句
グサリ!とこころに響きます
泣けるのも一つの才能ですよね
残念だが、泣けなかった

Commented by unburro at 2018-06-16 00:11
> こんのさん!

泣くのは、小娘の特権です。
だから、
私も、もう、今は泣けません。
だからこそ、あの頃が愛おしい。

男の子は、いつから泣けなくなるのでしょう。
「男はつらいよ」ってことですね…
Commented by hanamomo08 at 2018-06-16 08:40
ふれーふれー竹ちゃん!
旅立ちは新しい始まりですね。

人間味溢れる過去のエピソード聞かせてくれてありがとう。
>年寄りが若者に、自慢話や失敗談をすることを、

少々鬱陶しいことだ、と思っていたけれど、

それはある種の懺悔なのかもしれない。
私もそんな事を考えていました。
私もそんなに泣いた事なかったな~わすれたのかな~。
泣きたかったけどただ強がっていたのも若い頃の特徴ですね。
旅のご無事遠くから祈っていますよ、竹ちゃん。
Commented by こんの at 2018-06-16 10:22 x
ふと気づくと、知らぬ間に、頬を伝わる涙
80近くなると、泣く能力など枯渇してても
泣いてることがある。 っふふ 感情失禁
「男はつらいよ」じゃなしに 生きる辛さ?


Commented by unburro at 2018-06-16 17:02
> hanamomoさま

応援ありがとうございます。
バタバタしているうちに、明日出発になりました。
失敗を恐れず、今しか出来ない挑戦をしてほしいと願っています。

昨日、読み返して、恥ずかしいこと書いちゃったなぁ…
と、ほんの少し(笑)後悔しましたが、
こんな事を書きたくなった「今」を記録しておこう、と
納得しました。
これから先の人生、また大泣きすることがあるのかどうか…
嬉し泣きだったらいいんですけどね^ ^
Commented by unburro at 2018-06-16 17:10
> こんのさん!

知らぬ間に流れる涙は、感動の涙でしょうか。
それとも、辛さ、悲しさなのでしょうか。
どちらにしても、心が動くのは悪いことではないですよね。
60代、70代、そして、80代、自分がどんな風に歳を取るのか
楽しみのような、怖いような…

こんの先輩!
色々教えてくださいね!
Commented by wawa38 at 2018-06-16 17:56
>年寄りが若者に、自慢話や失敗談をすることを、
少々鬱陶しいことだ、と思っていたけれど、
それはある種の懺悔なのかもしれない。

そのとおり、ある種の懺悔なのでしょう。
いま、実感しています。

語れない多くのこと、たまにフラッシュバックのようにふいに現れます。そして、その時の感情まで思い出してしまいます。
Commented by unburro at 2018-06-17 01:56
> wawaさま

懺悔は、宗教の言葉なので重くて、安易に使っては危険かな、
とも思いましたが、辛かったことや悲しかったことを
口に出して、自分の言葉で、誰かに聞いて貰うのは、もしかしたら、
実は非常に大事なことではないか、とか、最近考えるのです。

とは言っても、誰に聞いて貰えば良いか分からないから、
こんな風にブログを書いているんだなぁ、と
今さら気付いたりしています。
お年寄りが若者に語るのも、インターネットに公開するのと似ています。
身近な家族や同世代の友人には、意外と本音を語れないものですから。
少々、脚色してもバレないし…
Commented by yomogi at 2018-06-18 10:37 x
今朝方の地震は大丈夫でいらっしゃいますかましたか。お見舞い申し上げます。どうぞ後もお気をつけてお過ごしくださいませ。
Commented by yomogi at 2018-06-18 11:08 x
泣いた原因より、泣くという行為そのものに意味があったのですね。だからいくら泣いても、涙は『水の玉』でしかない。
紫陽花の花にも葉にも美しい水の玉が似合うように、人生にも人間にも、それが必要な時があるのだと、思いました。
Commented at 2018-06-18 17:47 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by unburro at 2018-06-18 22:46
> yomogiさま

あまりきれいな思い出ではないのですが、
時が経てば、全ては儚く美しい…

素敵な解釈でまとめていただいて、
なんだか、照れます…^ ^;
Commented by unburro at 2018-06-18 22:47
> 鍵コメさま
ありがとうございます❣️
Commented by hanamomo08 at 2018-06-18 23:05
こんばんは。
今朝はそちらもかなり揺れたようですね。
大丈夫でしたか?
今後もどうぞお気をつけくださいね。
Commented by unburro at 2018-06-19 01:28
>hanamomo さま

ご心配いただきありがとうございます。
今朝は、大きな揺れに驚きました。
我が家は、家も家族も無事で、食器棚の中の重ねた皿や
酒盃などが倒れたり崩れたぐらいで割れたものもなく
本当に助かりました。

まだ余震が続き、予断を許しませんが、
正直なところ、あまり緊迫感はなく、
自分の能天気さに呆れています。
阪神淡路や東北、上越や熊本、各地の大地震を対岸の火事と
思っていたことに、今更ながら愕然としています。

交通機関も、まだ回復していない路線も多く、
ライフラインが止まっている地域もありますが、
私の住む地域は、今のところ大丈夫です。

東日本大地震を間近で経験し、乗り越えたmomoさんたちの
経験を、改めて学ばせていただかなければ、
と考えているところです。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by unburro | 2018-06-15 00:11 | Comments(19)