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金魚鉢




 落日や洗い終えたる金魚鉢        驢ノ574



 駄句である。





空っぽの金魚鉢は、悲しいけれど美しい。




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転院前から、希望を出していた個室が空いて、
今日、引っ越しをした。
今までも、2回ほど「空きそうですよ」と看護師長から期待を持たされて、
その度に、「状態の重い患者さんに譲って頂けませんか」と頼まれ、
どうぞどうぞ、と譲っていたのだが、今度こそ三度目の正直である。

そういえば、ここ数日、退院の人が多い。
ポン子さんも、めでたく退院された。
もちろん、空いたベッドには、次の患者さんが間髪入れずに入る。
整形外科や脳神経外科で、術後の早期リハビリを待っている人が沢山いるのだ。

夏から秋へ、リハビリルームも、新旧の患者が入り乱れ、
ちょっとした新学期の様相である。




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青池保子『ケルン市警 オド』

これは竹彦から回ってきた漫画。
同じく青池保子『修道士ファルコ』のスピンオフ版というべきシリーズで、
ファルコの同僚の修道士オドの出家前の物語である。
14世紀のドイツ、自由都市ケルンの物語。
街並みや衣装、風俗も、できるかぎりの時代考証がおこなわれているという、
青池作品ならではの、読み応えである。

青池保子といえば、東西冷戦時代のスパイもの『エロイカより愛をこめて』で有名な
少女漫画の大御所であるが、まだまだ現役の様子。
竹彦は、この人の「アルカサルー王城-』が、スペインにハマった一因であるという
変わり種で、以来、大ファンなのである。

この14世紀スペイン、レコンキスタ真っ最中に活躍した残酷王ドン・ペドロを主人公にした『アルカサルー王城ー』は、『ベルサイユのばら」に負けない歴史絵巻であると私も認めるのにヤブサカではないが、10年ほど前の男子高校生が、どこで青池保子に出会ったのか、不思議といえば不思議である。

私は、リアルタイムでエロイカを読んだ世代なので、
英語と世界史以外に興味を持てない高校生であった次男が、
世界史から文学やら哲学やらに興味を広げるきっかけになるのではないか、
と密かに期待しつつ、
「青池保子に、興味を持つとは、キミもナカナカ良いセンスだねえ」と
声をかけたものである。

若者の背中を押すのは、親や教師の助言とか、偉人伝とか文豪の名著とは限らない。
現代の子供たちは、ゲームや漫画をきっかけに、一歩踏み出すことも多いだろう。
私の世代は、その転換期に子育てをしていたのだな、と振り返るのだが、
そんな中でも、我が息子や娘は、ちょっとずれた所にいたようである。

親が親なら、子も子、なのである。




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個室の良いところの1つに、昼間から煌々と電灯を点けなくてもよい事がある。

自然光の中で、暮らすのは良いものだ。
同じガラス越しの空でも、少しは身近に感じる事ができる。













Commented by sheri-sheri at 2016-09-02 22:32
こんばんは。今日の一句もいいですねぇ。・・深い!ほとほと毎回毎回凄いなぁ・・と感嘆します。俳句というのは簡単に読めばそれで済むと手っ取り早く決める方もあるやもしれませんが・・人ごとのようですが、実は自分のことです。unさんのように心の底深くから湧き出る俳句を吟じてみたいです。いつの日か。・・・       
漫画家、青池保子さん。しりませんでした。どことなく絵のタッチは乙女漫画風ですね。・・魅惑的です。
Commented by unburro at 2016-09-03 08:35
> sheri-sheriさま

おはようございます!
金魚鉢って、誰が最初に作ったのかは知りませんが、
素晴らしいデザインです。
夏祭りの金魚すくいで持ち帰った金魚が、弱ってくる頃です。
我が家の小さな庭の片隅には、目印の小石が並んだ金魚たちの墓地…
があります。きっと、皆さんのお家の庭にもあることでしょうね。
そんな事を思う、夏の終わりです。

青池保子、クラシックなタッチですが硬派の漫画です(笑)
Commented by saheizi-inokori at 2016-09-03 09:13
やっぱり個室はいいでしょう。
人間観察もじゅうぶんできたし、さらに新しい境地を開拓されるのが楽しみです。
Commented by unburro at 2016-09-03 09:32
>saheizi様

はい、個室はいいです。
贅沢だな…と思いつつ、精神衛生面ではすこぶる快適です。
しかし、経済面の問題ではなく、淋しい、不安、とかで
大部屋を希望される方も多いらしいので、あまり遠慮しないで、
エンジョイしようと思います。

新しい境地…は、どうかなぁ〜ふふふ、です。
Commented by mother-of-pearl at 2016-09-03 09:57
たくさんの交流を経た後での個室は、さぞかし新鮮でしょうね!!
部屋の明るさでさえ我慢していらしたのだなあ、と
いじらしい妹を見る思いです(ToT)

>英語と世界史以外に興味を持てない高校生であった次男

多教科の縛りから解放された社会人の今は最強の分野ですね!
漫画を通して愛すべき国を見つけ、これから彼の地で更に極めようとなさる竹彦さんを見送るそのお母さんに、
感涙と共に遠くから拍手を送っています。

後少しですね!!
Commented by unburro at 2016-09-03 12:52
> mother-of-pearlさま

明るい事を、苦にしていたつもりはなかったのですが、
1人になって、電灯を消してみたら、すうーっと
静かな気持ちになりました。

英語と世界史…確かに、グローバル⁈ですね。
そんな事を思ったことなかったです(笑)
国語と日本史好きの私は、何だコイツって思っていました^ ^;
Commented by こんの at 2016-09-03 15:11 x
妻の場合は、入院・手術からリハビリ・退院まで、ずーっと4人部屋でした
妻の従姉妹が、大学付属病院で個室、次いで4人部屋になり、今は別の病院で個室です
個室を望んだのではなく、療養の必要からのもので、かなり重篤な容体だからです
従姉妹は、妻と同学年度ずーっと仲よくしてきました
同じ個室といっても、使い方におおきな差があるのですよね
Commented by unburro at 2016-09-03 17:55
>こんのさん!

昔の大部屋は、6人くらいが普通でしたね。
診察や着替えのときくらいしか、境のカーテンを閉めることもなく、
皆、開けっ放しで、お見舞いのお菓子など取り替えっこしたり、
誰かが苦しそうだと、代わりにナースコールを押したり、
助け合って、共同生活って感じだったと記憶しています。

最近は、一日中、カーテンを閉めている方が多く、
森敦『月山』の、和紙で囲った部屋のようです。

母が最後に入院した時も、4人部屋で『月山』状態でした。
とても神経質な人だったので、少しでも穏やかに過ごしてもらいたいと思って、
「個室に移ろうよ」と勧めたのですが、
「そんな分不相応な、勿体ない事はできない。」と
弱った身体で、断固として断った事が忘れられません。
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by unburro | 2016-09-02 22:05 | 膝手術、とか | Comments(8)