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桜桃




 桜桃のひとつひとつが甘い息        驢ノ524




 駄句である。






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ころころ、と、箱から溢れ出た桜桃たち。
ひとつとして同じ形、色合いのものはなく、
口に入れれば、また、甘さ、酸っぱさ、同じものはなく、
自然天然の不思議を目の当たりにする。

りんりん、と鈴なりに実る桜桃の木を想う。
陽の光や、通り過ぎる風を想う。



サクランボの面白いところは、
ひとつずつ、しか食べられない事ではないか。

例えば、ぶどう、ならば。

幼い頃から、密かに願っていた事を、大人になってから、
こっそり試したことがある。
それは、ぶどうの皮を、まとめて剥いて、種も取って、
小皿にいっぱい溜めておいて、それを口いっぱいに放り込んで、
唇の端から、果汁が滴るほどに頬張り食べることである。
これを実行してみた

美味しい、確かに美味しいし、何より背徳の心地して、満足はした。
手放しで「満足した」というほどではなく、「満足は、した」という感じ。
もう一度やろう、とは思わないけれど、後悔はしなかった。

しかし、サクランボで同じことをしたら、
きっと、後悔するだろう、と思う。

軸も種も取って、口いっぱいにモグモグしても、
きっと、虚しいばかりのような気がする。

後悔先に立たず、というけれど、
これは、行う前に後悔が見えている。



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というわけで。サクランボをひとつずつ食べる。
黄から紅へのグラデーション、夕焼の空を想う。
薄い皮を歯でプチ、と噛む歯ごたえの柔らかさ。

ひとつを口に入れた直後に、次のひとつを手に取って、
軸のしなり具合など観察している。
口の中では、歯と舌で種を探り出しつつ、果肉を味わう。
口から種を出しつつ、次のサクランボを口に入れる。
この連続がうれしい、幸せである。

しみじみと見れば、確かに桜桃というだけあって、
桃の形をしている。
この愛らしい実をポンと割って、小さな姫が生まれるという物語を、
誰も思いつかなかったのだろうか。

ちいさな、ちいさな、紅い頬の女の子が、
わらわらと生まれて踊りだし、歌いだせば、
それはAKBとかSKBのように、面白いのではないだろうか。




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こんな風に、桜桃を、眺めては食べ、食べては眺め、
を繰り返していると、
この世の幸せは、ちいさな満足で成り立っているのだなあ、
などとオチをつけたくなる。

しかし、イギリスのEU離脱の成り行きなどを見ていると、
ちいさな不満が集まって、大きな不安定を作ってしまうのだ、と
沈んだ気持ちになる。

そして、このちいさな不満の元に、難民問題がある事を思うと、
その難民問題を引き起こしたアルカイダやISが持つ原理主義的、排他的な文化は、
テロリストに限った事ではなく、まして後進国と先進国という問題でもなく、
人間という存在が内包する利己的な感情なのだと認めざるおえない。

誇りや愛国心というものが、他者を排斥する感情に基づいていることを
こんなに堂々と認めてしまった事は、今後にどう影響を与えるのだろう。
そして、この流れはイギリスだけではなく、他のヨーロッパ諸国、アメリカ、
いやいやこの日本にこそ、数年前から渦巻いている。

この様に、先進諸国に不寛容で排他的な空気、憎しみの連鎖を作り出し、
分裂させる事がISなど原理主義者達の一つの目的だとすれば、
それは成功してしまった、のかもしれない。

正に、パンドラの箱が開けられてしまったのだ。




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パンドラの箱の底に、ひとつ残っていたという
「希望」
は、あるか、ある。


たぶん。


そして、
希望というのは、白か黒かと、二者択一で選ぶものではなく、
黄色から紅に混じり合い輝く、ちいさな桜桃のように、
一色に染まったものではない、曖昧なものなのではないか。


と、漠然と思う、夜である























Commented at 2016-06-26 07:46 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saheizi-inokori at 2016-06-26 10:14
若者たちが残留に投票したことに一抹の希望を感じますが、どうじに老人たちが若者と同等の投票権を持っていいのかと思います、彼らの未来を決めるのですから。
ブドウは今のような大粒ではかないませんが、昔のデラウエアみたいな小粒は皮ごとむしゃぶりついて口の中に残ったタネと皮だけペッと吐いていましたよ(山梨では)。
Commented by unburro at 2016-06-26 11:31
> 鍵コメkさま

ナルホド‼︎
葉摘みをしない事が、ポイントなのですね。
色や味にバラつきがある、しかし、甘い。
葉の養分が実に伝わって、甘くなるのでしょうか。

確かに、本当に甘くて美味しかったです。

一番上の写真は、昼に自然光で撮ったので、黄色味がちゃんと写りましたが、
以下の3枚は、夜、蛍光灯の下で撮り、その上、デジタル処理で明るくしたら、
黄色が飛んで紅が強くなりました。
難しいですね…

ともあれ、葉摘みをしない桜桃は美味しい!
色も、真っ赤じゃなくても美味しい!
ということですね、素晴らしい (^o^)/*
Commented by unburro at 2016-06-26 11:52
>saheizi様

EU残留派は若年壮年・高学歴。離脱派は高齢・低学歴。
という傾向は、予想出来た事ではありますが、難しい問題ですね。
日本の場合は、大学を出ても頭の中身が低学歴な若者が多いので
その辺が離脱派系の発想をする様な気がします。
バカで短絡的な若者が、本当に増えている気がします…
日本のお年寄りは、戦後の民主主義の値打ちを知っている方々なので、
若者たちより、頼りになるような気がするのですが、どうなんでしょう?

ブドウを皮ごと、その後ぺっぺっ、ですかワイルドですね!
縁側とか土間のある暮らしをしたことがないので、
種をぺっぺっ、の食べ方に憧れがあります。
いつか、やりたいなあ…^_^
Commented by こんの at 2016-06-26 16:18 x
パンドラの箱
それがあるから、ぎりぎりのところでどうにか生き残れる
たとえ、自分の意思とは相反する社会の中でも
希望という導き星があるかぎり

種飛ばし
ぶどうの皮・種まるごと口いっぱいのワイルドさ
ならば、さくらんぼの種飛ばしは如何?!
ギネス記録にトライあれ
目指せ世界一(笑)


Commented by unburro at 2016-06-26 17:15
>こんのさん!

さくらんぼ種飛ばしギネス記録は、28.51メートル‼︎
山形大会の優勝は、11メートル台の様ですね…
すごいですね〜

パンドラの箱、子供の頃この話を読んだ時は、
怖いなあ、世界には嫌なことの方が多いんだなあ、と
悲しい気持ちになりました。
でも、大昔から、人々はちいさな希望があるからこそ、
命をつないできたのですね。
「希望という導き星」素敵な言葉ですね!
Commented at 2016-06-26 21:46 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by unburro at 2016-06-27 00:21
> 鍵コメmさま

ナルホド、メロンのスイカ食い!
うんうん、ガブッといきたいですね〜。

日本もイギリスも、大陸のそばの島国。
根拠なくプライドが高いのも、同じですね。

いつか、夫婦でイングランドからスコットランド、アイルランド、と
ビールとウィスキーを飲み歩く旅をしたい、と夢見ているのですが、
私と夫の双方の都合がよくなる時と、
イギリスとユーロの双方が安定した関係になる時と
どっちが早いかなあ…
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by unburro | 2016-06-26 01:09 | 桜桃・サクランボ・さくらんぼ | Comments(8)