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野鍛治





里の市野鍛治惜しげに鍬を売り 
         驢ノ480



駄句である。 




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(左の店、台の上に棒が立って見えるのが鋤や鍬で、棒はその柄である。)





早朝6時過ぎ、夜行バスが、長岡駅前に着いた。

荷物はデイバック1つなので、バスのトランクから大きな荷物を出す人々を
追い越して、バスから離れ、辺りを見回す。
バスを降りた歩道から、駅らしきものは見えない。
少し戻って、トランクに半身を突っ込んでいる乗務員に、尋ねると、
2ブロック先の信号を右に曲がって、しばらく歩くと、突き当りが駅、
と、親切に応えてくれた。

「おおきに、ありがとう。良くわかりました。」

と言ってから、
使い慣れた「おおきに」の言葉が、外国語の様に響くことに気付いた。

さあ、異国に入ったのだ。



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長岡駅構内の、カフェを併設したパン屋に入る。
焼きたてのパンの匂い、サイフォンが並びコーヒーが香る。
「当店オリジナル野沢菜フランス」を皿にのせてテーブルへ。
ほんのり味噌の香りの野沢菜炒めが、フランスパンの生地に包まれて、
絶品。
いい仕事してるよ、長岡駅のパン屋さん。
サイフォンで淹れたコーヒーは、すっきりとした苦みが心地よい。
夜行バスの中の浅い眠りで、ぼんやりした頭が熱いコーヒーで目覚めてゆく。

出発時間を確かめ、上越線のホームへ向かう。
越後湯沢行きの各駅停車、懐かしいオレンジ色の車体の列車が、待っている。
鉄道には詳しくないのだが、オレンジとグリーン、
国鉄時代の車両ではないだろうか。
乗り込むと、座席と背が直角で、窓も手動で引き上げるタイプ。

帰宅してから、調べると、115系とかいう、懐かしいタイプらしい。

長岡には、ほとんど雪がなかったが、
進むにつれ、トンネルを抜ける度に、残雪が増えてゆく。
目指すのは、紬の里「塩沢」である。




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塩沢での、最初の目的は
大里一宮の春季大祭である。
「農具市」とも呼ばれるこのお祭りは、
籠、わら細工、菅笠、鋤や鍬などの農具を売る店が出る。
春の農作業の始まりを告げる祭りなのだろう。
魚野川と登川に挟まれた大里地区は、かつては水運の要所でもあり、
昔から、大変賑わった祭りであるらしい。

温泉宿の予約が取れた時に、地元のウェブサイトの歳時記で見つけた祭りである。
雪の上に、笊や籠を並べて売っている写真を見て、是非に、と計画に入れた。



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地元の野鍛冶らしい人が、鋤や鍬、鎌などを小さな台に並べて売っていた。
土地土地で、鍬の長さや角度が違う、と聞いたことがある。
土壌や、作る作物によって、使いやすい形があるのだというが、
私に分かるものではない。

値段交渉する買い手と、工夫の難しさを語る売り手をの会話を、少し離れて見聞きしていた。
そのうちに、だんだん、険悪な雰囲気になってきたので、
カメラを向ける機会を逃してしまった。

大きなレンズを付けたアマチュアカメラマンのような人も、ちらほら見受けられ、
あちこちにレンズを向けて、シャッターを押していたが、
私は、やはり、ひと言断ってから、カメラを向けないと、落ち着かないので、
チャンスを窺っていたのだ。


箕や菅笠を売っている店の人とは、色々な話しが聞けて楽しかった。
囲炉裏の自在鉤に掛けた鍋に似合いそうな、お玉を買った。
今度、山形風の芋煮を作る時に、使ってみよう。

そして、ゆっくり写真を撮らせてもらった。

菅で出来た笠、ここで山笠とか富士笠とか言われるものも、初めて手に取った。
山笠音頭などの踊りか、時代劇の中でしか見たことがなかったのだ。
売る人も買う人も、そんな風に喜ぶ私を面白がって、
細かな工夫や、便利さ、丈夫さを、訥々と、しかし、熱く語ってくれる。
そんな出会いが、有難い。


そして、ここでの出会いが、次の出会いへと、私を導いてくれた。
その話は、また、次回。

















Commented by こんの at 2016-03-18 09:16 x
囲炉裏の自在鉤に掛けた鍋に似合いそうな、お玉を買った。

っふふ 楽しそう  いいなぁ


Commented by unburro at 2016-03-18 10:54
> こんのさん!

楽しかったですよ‼︎
田畑の仕事、道具を作る仕事、
そういう地に足がついた仕事をしている人たちは、
年齢に関わりなく、いい顔をしていらっしゃいます。
話が尽きない…のです。
Commented by mother-of-pearl at 2016-03-18 13:58
鍛冶屋さんは私のヒーローです!
砂浜で砂鉄を集め農具を鍛造しているのを飽きずに眺めていました。

野鍛冶の様子をご覧になり、野沢菜のパンを召し上がる!

ひと声かけ損なった場の人は、写真に収めた以上に心に残りそうですね!

目線を共有できることが多く、益々旅の行方が楽しみになりました!
Commented by unburro at 2016-03-18 22:53
> mother-of-pearlさま

火と鉄、心躍りますね!
mother-of-pearlさんと、私は、本当に魅かれるものが似ていますね(笑)
>目線を共有できることが多く…
というのは、そういうこと、なのでしょうね。

手仕事、美味しいもの、を求めていると、
類は友を呼ぶ、というやつで、縁がつながり、面白いです。
Commented at 2016-03-19 13:04 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by hanamomo08 at 2016-03-19 23:50
こんばんは。
大里一宮の春季大祭・・・・これを目指して旅をされたのですね。
農具市・・・・・暮らしに根ざした市がこうして続いていることはすばらしいですね。
菅笠も箕(?)もざるも莚も、どういうわけか豆もみんな欲しい。
豆は種になるために売られているのでしょうか?
お玉もいいですね、使い込めばまたいい色合いになるでしょう。

秋田の五城目というまちも鍛冶屋さんの多い町です。林業も盛んだったので鉈や鎌など朝市には今でも並びます。
Commented by unburro at 2016-03-20 11:45
> 鍵コメmさま

雪解けの山、芽吹きの匂い、春の陽射しは
全ての物に光を与えているようでした。
野山の素材を使って、人の手が作った物には、
小さな魔法がかかっているようでした。
Commented by unburro at 2016-03-20 12:02
> hanamomo08さん

>どういうわけかみんな欲しい。

そうなんです‼︎
みんな欲しい気がしました。
大きな手付きの籠も、momoさんなら素敵に使いこなされるだろうな、
思います。同じ大きさでも、値段に差があって、丁寧ないい仕事だなあ、と思って手に取ると、ぐっと高い値付けがされているのです。
そんな時、売っている人と目が合って、
「おぬし、なかなかヤルな…」という感じになるのが楽しい、です。
豆は、料理用でした(多分…)
白いんげん、小豆、とら豆、色々な種類があって、
きっと、ふっくら煮えるだろうなあ、と思いました。
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by unburro | 2016-03-18 02:40 | 旅 八海山 | Comments(8)