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六甲颪




立春や六甲颪は雪まじり  
        驢ノ470



駄句である。     




六甲颪(ろっこうおろし)。
おろし、ってこんな漢字なんだ、とびっくり。
風の上に、下、と書くのだ、へええ、である。


先日、六甲山の麓に引っ越した友人を訪ねた。

新居に足を踏み入れて、最初に出迎えてくれたのは、
シェットランド・シープドッグ、
いわゆるシェルティの子犬だった。

仕事の都合で、余儀ない転居であったのだが、事前に、
友だちと離れたくない、という小学生の子供たちの抵抗があったらしい。
そこで、引っ越しの交換条件として、犬を飼うこと を約束した友人は、
ペット可のマンションを探し、
マンションが見つかってすぐに、
そのマンションの規定に合うサイズの犬を探したのだ、という。



六甲颪_b0290638_23102378.jpg



拾った小雀以外、あまりペットに縁のない生活をしている私だが、
犬や猫が嫌いなわけではない。
手間が掛かるのが嫌なのと、生き物を育てる責任を負うのが嫌なのだ。

そして、
「ボクが世話をするから、飼ってください」などと子どもが言っても、
どうせ、全てを子どもが引き受けることは不可能なのだから、
結局、「約束が違う」とか、「責任を持ちなさい」とか、
不毛な会話が繰り返されることは、火を見るよりも明らかで、
そのような無駄なストレスが自分に掛かることを怖れるのだ。

その上、自営業なので、仕事場に犬猫に入られても大変なのだ。

というわけで、ペットとは無縁の我が家なのだが、
この、シェルシーという犬には、ちょっと魅かれるものがあった。
兎に角、賢そうな顔をしている。
そして、元々、牧羊犬だというだけあって、実際に相当賢いようだ。

個人ブリーダーから、直接分けて貰ったというこの犬は、
子犬といっても、もう既に、8カ月なので成犬と同じくらいの大きさらしい。
おっとりした性格で、その上、耳の形が悪い、とかで
ドッグショーに出すのを止めたという、この犬は、誠におとなしく、人懐っこく、
初対面の私に対しても、ぐるぐる廻って、ひと通り匂いを嗅いだ後は、
すっかりリラックスして、ソファに座る私の膝の上にアゴをのせている。

こういう、無作為な、無防備、無欲な動物と接するのは、
ツライなあ、としみじみ思う。

無欲な者と接する時ほど、
自分が何も与えるものを持たない者であることを痛切に感じる。

または、
今、仮に何か与えることが出来たとしても、
それを継続して与え続ける約束が出来ないことの無力さを感じる。

それより、
この無欲な者が、本当に欲しいものは何なんだろう、と
分からない自分が情けない、という気分になる。

無欲な者の眼差しほど、こわいものはない。

などと、胸の内で反芻しながらも、
友人と、その子どもたちに誘われて、近くの公園まで、
子犬のリードを引いて、散歩に出かけた。

後になり、先になり、犬は4本の足を器用に交差させて石段を登る。
私も、新しい革紐から伝わる犬の息遣いを感じながら、寒風の中を歩く。

目前の六甲山から吹き降ろす風の中に、小さな白いものが混じってきた。
坂道をころがり落ちる、小粒のビーズのような雪だ。
犬の、ふさふさ揺れる茶色と白の長い毛にも白い粒々が積もる。

立春とは名ばかりの今日この頃、などという時候の挨拶が、頭に浮かぶ。


六甲颪に吹かれて、子犬と歩いたこの日の事を、
いつか、夢の中の出来事のように思い出すかもしれないなあ、と

思った。







六甲颪_b0290638_23284933.jpg





















Commented by こんの at 2016-02-09 09:11 x
>六甲颪に吹かれて、子犬と歩いたこの日の事を......

そうですねぇ そう 
1987年夏の夜、六甲山で夜景を楽しんだ帰りの坂道、裸足になって宿舎まで歩いたことを思い出す。若い日のそれが懐かしい!
あぁ、29年前のことがまるで夢のように......
 
Commented by unburro at 2016-02-09 09:38
>こんのさん!

29年前私は何をしていたかな…と、思い返すと…
ちょうど、結婚した頃です。
その頃、こんのさんは山形ではなく六甲山にいらっしゃった⁉︎
そして、今、こんな所⁉︎でお友だち♬
おもしろいですね〜
Commented by saheizi-inokori at 2016-02-09 09:54
子供たちがサンチと遊びながら「小さい頃犬を飼ってほしかったなあ」というのですが「ちゃんと面倒見られたと思う?」と訊くと、無理だったかなあというのです。
私が子供のころは私の頃は放し飼いでご飯も残り物、医者なんか連れて行かなかったけど。
日のあたるソフアに寝転がって本を読もうとすると気配で察してサンチが駆け上がってきて足の間に場所をつくって膝に顎をのっける。
トイレに行くもの、起こしてしまってもったいない(申し訳ない)ような気分です。
Commented by pallet-sorairo at 2016-02-09 10:37
私が3番目(そして最後?)に飼ったのがシェルティでした。
我が家のトーマスは、その頃中学生だった長男がしつけましたが
本当におりこうさんでした。
いつぞやなど、友達の家に連れて行って玄関に座らせておいたら
知らない間に友だちがお菓子をくれていたにもかかわらず
だれも「よし」と言ってくれなかったので
私が帰る時までじっと困った顔でそのお菓子を見つめていたなんてことがありました。
おりこうさんなんだかおバカさんなんだかってところですが(^^ゞ
あらら、思いがけずシェルティなんかが出てきたので
ばば馬鹿だけでなくペット馬鹿も披露しちゃったかも(^^;
Commented at 2016-02-09 10:38 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2016-02-09 13:27 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by unburro at 2016-02-10 00:32
> saheizi-inokori様

子どもと犬を同時に育てられる人は、凄いなあ、
と以前から思っていたのですが、
今回、犬と子ども(小学生2人)の居る家庭に行って、
子どもと犬が、お互いに育て合う、という事もあるのだな、
と思いました。
でも、私には無理だったな、とも思いました。
適性というものが、私には無いような気がします。
Commented by unburro at 2016-02-10 00:39
> pallet-sorairoさま

シェルティ、賢いですねえ、びっくりしました。
トーマス、っていい名前もシェルティっぽい。

男の子にとって、犬を育てるというのは、大変有意義なこと、
人生にとって、大切なことのような気がします。
犬を躾けられる男、って、それだけで信用できる気がします。
Commented by unburro at 2016-02-10 00:45
> 鍵コメmさま

そう、不思議な一日でした。
もし、自然に囲まれた一軒家に住むことがあれば、
(絶対、ありえない事ですが…)
犬を飼ってもいいなあ、などと、生まれて初めて思いました。
なんか、弱気になっているのかな…
Commented by unburro at 2016-02-10 00:49
> 鍵コメkさま

いえいえ、大丈夫です。
私の書き方が、ややこしかったのです。

岩倉などで研修をなさっていた頃のことでしょうか?
長男が、いつかお話してみたい、などと言っておりました。
Commented by mother-of-pearl at 2016-02-11 11:10
物を言わぬだけに余程多くを語ってくれるのが
”動物(植物も)”ですね。それだけに”飼う”と
なったら大きな責任も伴いますね。
私達家族にとって唯一の犬は既に亡くなりましたが
だからといって”次は何を飼うの?”という訳には
いきませんでした。ずっと心の中で生きています。

きっと心に残る素敵な時間をお過ごしになりましたね。
そして心の中の雀ちゃんも・・・・。
Commented by unburro at 2016-02-11 18:42
> mother-of-pearlさま

ほんとうに、おっしゃる通りです。
動物だけでなく、鉢植えの草花もうっかり枯らしてしまうと、
しばらく落ち込みます。

生きている限り、どこかに、何かに、
責任を持たなければならないのですが…
逃げられるものなら、逃げたい、と思う私です(ー ー;)
Commented by wawa38 at 2016-02-12 00:15
以前飼っていた犬、ハチのことを思い出しました。
抱き上げたときのぬくもりと重さ。
未だに腕の中に残っています。

>生きている限り、どこかに、何かに、
責任を持たなければならないのですが…

私も逃げられるものなら逃げたいと思っていました。
そんな時期もありました。
Commented by unburro at 2016-02-12 18:43
> wawa38さま

ハチ、ですか!
いいですね~忠犬の名前ですね。

命のぬくもり、というのは、
うれしくも、はかなく、忘れがたいものですね。
子雀がうずくまる掌のぬくもり、を忘れる事はできません。

逃げられるものなら…と思っていても、
>そんな時期もありました。
と振り返ることが出来る日が、私にも来るのでしょうか…
まだ、遠いなあ、と思います、とほほ…(=_=)
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by unburro | 2016-02-08 23:33 | Comments(14)