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驢ノ401ー450




8月

髭面も我の赤子よ立葵                 

凌霄を見上げる髭に霜を置き             

逃げ水や似た人に逢う昼下がり           

ところてん一口残す日陰かな              

ところてん静かに怒る炎天下             

見上げれば熱き花火の涼しさよ          

ひとり寝てひとり目覚める昼寝かな                        

初盆や揚羽ひらりと還り来ぬ            

朝涼し水風船の萎れおり           

未練かなつくづく惜しいと蝉の声           

路傍にて蝉の屍の翅涼し              

それぞれの吹かれ様あり野分あと         

つがると云ふ禾目の肌の林檎あり           



9月

高々とゆきて帰らぬ秋の空          

立ち止まり風止まり見る猫じゃらし           

無花果の割れて淫なり蟻の宴             

無花果を握り潰しそうな夜        

欠け茶碗欠けたる儘に虫の声             

献立の決まらぬままに梨重し         

梨重し敷居は高し法事かな          

満々と甘露湛えて梨重し           

薄野や迷いの果てのされこうべ           

今朝からは戦前なりや萩の散る             

天高く天青く在り是に在り           



10月

天井の埃に秋の光かな           

子狐に紫苑の似合う絵本かな           

尚更に夜の暗さよ鰯焼く            

矢も尽きて芋煮の椀に月ひとつ           

片頬で笑っているよ細い月           

秋遍路昨日の道と今日の道          

気に入りの鍋を磨いて日を跨ぐ            

松茸のとおり過ぎたる志野土瓶            

厨にて屈託流す十三夜                



11月

穴惑い惑っておらぬと日向ぼこ       

靴下の穴と語らう小春かな            

時雨去り残る暦の薄さかな         

鼓などぽんと打ちたい神無月         

月山や里の漬け菜と濁り酒           

焦げくさき妻と夫と濁り酒           

濁り酒かくかくしかじか夜が更ける       

洋梨を用無しと聞く日暮かな        

満たされて尚も無常の照葉かな           

刈田より雀もどりて柿赤し          

この秋も迷い子のまま暮れにけり         

遠き日は日向の布団にひとりぼち         

草の実が背なに絵を描くかくれんぼ        

守る為攻めるも愚か裸の木          


12月

干し柿は憶えているかしら渋かった頃を      

訥々と傘と語らう冬の雨            

霜の朝追われる夢の行き止まり           

木守柿こころの如く赤々と           







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探し物があって、納戸を少し整理した。
良い天気なので、窓を開けると、奥の本棚の懐かしい本や、
かわいいもの達に光が当たった。

ここ数年、買った本は出来るだけ、早いうちに売るようにしている。
その為にも、古本を買う事が多いのだが、子供達が小さいころは、
絵本を買うのが嬉しくて、もちろん新しい本を買っていた。
何度も何度も繰り返し読んで、傷んだ本ばかりなのに、手放す気にならないのは、
それぞれの本と、時々の思い出が一緒になっているからだろう。

旅先で買った小さな人形や、誰かに貰ったお土産も、
その物の価値以上に、いつ、どこで、だれが、という思い出が付いているから捨てられない。



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今回の50句も、並べてみると、つくづく、まったく
駄句だなあ、と
今更ながら、思うのであるが、
仕方ない、誰でもない自分が書いたものだ。

書き直したい句もある、消してしまおうかという句もあるけれど、
何となく捨て難いのは、昔の本が捨てられない様なものかもしれない。



















Commented by こんの at 2015-12-15 08:08 x
>その物の価値以上に、いつ、どこで、だれが、という思い出が付いている

そうですねぇ
それがいちばんたいせつなこと!
Commented by saheizi-inokori at 2015-12-15 08:43
つくづくいい句だなあ、とおもいましたよ。
>見上げれば熱き花火の涼しさよ  
悲しさよ、の夏でした。        
Commented by pallet-sorairo at 2015-12-15 09:10
unburroさんの写真とエッセイの素晴らしさにに引き込まれて
8月からまた読み返してしまった朝です。

401句から450句のうち印象的な私の一句は

片頬で笑っているよ細い月  

竹彦さんの日の句でした。


 
Commented by unburro at 2015-12-15 20:54
> こんのさん!

年末になると、また改めて、思い出を重ねる、という事を
考えたりしますね。

Commented by unburro at 2015-12-15 21:00
> saheizi-inokori様

大曲の花火…でしたね。

悲しいこと、辛いこと、腹の立つこと、色々ありました。
うれしいことも、楽しいことも、あったけれど。
振り返れば、あっという間の、50句でした…
Commented by unburro at 2015-12-15 21:11
> pallet-sorairoさま

過分なお褒めの言葉、恥ずかしいけれど嬉しいです(^^)/

まったく、夏から冬にかけて、竹彦に振り回された半年でした(笑)
というか、大学を出てから、ずっと、彼は波乱万丈です…
もう、又吉君の「火花」の主人公と、いい勝負…
Commented by hanamomo08 at 2015-12-16 22:45
俳句を作り続けるって大変なことです。
だから消してしまおうか、書き直そうかと思ってもそれはその時の気持ちそのままなのですから、このままでいいと思います。
すばらしいです。
私が一番好きな句は
『無花果を握り潰しそうな夜』
それと
『 厨にて屈託流す十三夜 』
でもそれぞれにみないいですね・

思い出の本たち、私は時々本棚の前に座り込んで、本をめくってみます。
あの頃の子ども達に会えるような気持ちです。
いつまでも子離れが出来ない母親です。     


Commented by wawa38 at 2015-12-16 23:31
こんなに素敵な句ができるのは、素養もあおありだからですね。
私が好きな句、

 この秋も迷い子のまま暮れにけり 

迷子のまま暮れてしまいそうな私の人生と重なるように思えて。
作品は、作品になった瞬間、作者を離れて読み手の中でそれぞれに動き出します。
ほかにも私の中で動き出した句も多くあり、unnburroさんに感謝します。        
Commented by unburro at 2015-12-17 10:08
> hanamomo08さま

うふふ、やっぱり台所関連の句に、共感していただいて、
うれしいです。
こんな風に、褒めて下さる皆様のおかげで、作り続けていけるのだと思います。
もし、どこからも反応がなければ、たぶん挫折していると思います。

子どもの本は、いいですね。
思い出の本も、もちろんですが、
今でも、本屋さんで絵本を見ると欲しくなります。
品質が良くなった分、価格も上がった様で、
やっぱり、考え抜いて、また棚に戻してしまいます。
Commented by unburro at 2015-12-17 10:30
>wawaさま

いえいえ、素養などと、とんでもない、です。

まだまだ作品などと云えるレベルの句ではないのですが、
ブログとはいえ、表に出してしまったものは、読者の方と共有している同時に、
読み手の方のものにも、なっているのですね。

迷い子、迷い道とか、私の句には、迷という字が多いような気がします…(笑)
Commented by こんの at 2015-12-18 16:36 x
矢も尽きて芋煮の椀に月ひとつ     驢ノ428

芋煮のエッセイを再度読んで
ふ~む この句が
凄い!ことだなぁ

Commented by unburro at 2015-12-19 23:12
>こんのさん!

今日の「春のよき日に vol.3」で、hanamomoさんが、
秋田の昔っこ(昔話)の中に、鍋の中の牛蒡が、豆腐の病気見舞いに行く話がある、
と書いていらっしゃって、とても嬉しかったです。
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by unburro | 2015-12-15 01:51 | 駄句反省会 | Comments(12)