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濁り酒





月山や里の漬け菜と濁り酒           驢ノ438 


焦げくさき妻と夫と濁り酒           驢ノ439


濁り酒かくかくしかじか夜が更ける       驢ノ440



駄句である。





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北国に住む善き人から、美味い漬け物が届いた。
おみ漬け、とよばれており、近江の商人が伝えたという謂れがあるという。
青菜(せいさい)を主に、菊芋、人参などが入った眼にも美しい刻み漬けである。

菜を刻む、塩を振る、味付けをして混ぜ合わせる。
全てを、善き人の手がおこなうのである。
善き人の心持ちが、手から菜へ伝わり、味わいを深めるのである。
まっすぐな味がする。あたたかい味がする。
昔から人は、大切な人の為にこの漬け物を作り伝えてきたのだと、わかる。

月山が冠雪したという便りを聞きながら、
青々とした漬物に箸を伸ばし、
濁り酒を満たした杯を見れば、ふわふわと白い酒が、
高い嶺に降る雪にも見えるのである。





濁り酒_b0290638_23303928.jpg




煮物を焦がし、魚を焦がし、今日の厨は焦げ臭い。
そんな日もある。
年に一度か二度は、そんな日がある。

嗚呼、ビタミンTABIが足りないのだ。

そんな妻の屈託を知ってか知らずか、
文句も言わず、大根を食べ、魚をほぐす夫は、なかなか曲者ではある。
火のない所に煙は立たぬ、炎が上がるわけではないが、
何となく焦げくさい時もある。
そんなふたりの間には、濁り酒。

お互いがが独酌で、杯を重ねる。
ひんやりと口当たりよく、喉を滑り、胸のつかえを溶かしてゆくようだ。
この濁り酒は清酒より度数が高く、いつの間にやら、ほろ酔いである。

まあ、いいか。

焦げくささも、おみ漬けの清々しさで消えてゆく。
旅は、遠のいたが、月山の風が届いた。

まあ、いいか。

秋の夜長は、かくかくしかじか更けてゆくのだ。
















Commented by こんの at 2015-11-09 07:54 x
濁り酒かくかくしかじか夜が更ける   驢ノ440

ふ~む なんだかしらないが、泣いてしまいそうないい句
「かくかくしかじか」の会話が物語となって聴こえてくる
Commented at 2015-11-09 09:00 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by unburro at 2015-11-09 09:12
>こんのさん!

たわいないことも、かくかくしかじか、などと…
振り返っても、覚えていないような、しかじか、です(笑)
Commented by saheizi-inokori at 2015-11-09 09:12
まあ、なんてとんでもない、最高ではないですか。
我が家なんて、、とてもお聞かせできません。
Commented by unburro at 2015-11-09 09:36
> 鍵コメ様

お褒めいただきありがとうございます。

大丈夫です。このままで!
Commented by unburro at 2015-11-09 09:48
>saheizi様

確かに、この日常が有難い。
秋の夜長は、静かです。
Commented by mother-of-pearl at 2015-11-09 12:30
濁り酒・・良いですね!

清酒も焼酎も麦酒も(自らは)飲みませんが
母を訪ねた時の夕食には必ず濁り酒を楽しみます。
(日田の酒造、薫長の濁り酒、良いですよ!)

黙して語らずであったとしても、やはり分け合う方がいる席は良いですね。
酒は喜びも哀しみをも倍増するらしいですから、ね。

TABIは遠くにありて想う、のも素敵ですね。
だって、予算・日程無視でいくらでもプランが湧いてくるから!

私は経済制裁解除前のキューバに行ってみたかったのですよ・・

(素面でしかも昼間っからぶっ飛んでる流木です)
Commented by unburro at 2015-11-09 13:40
> mother-of-pearlさま

キューバ‼︎
あのレトロな車が行き交う街!
アメリカナイズされる前に、行きたいですね〜
ヘミングウェイ好きとしても、外せない場所ですが、
夢は夢のまま、終わるのか、どうか…

日田の濁り酒「薫長」!チェックします。
Commented by mother-of-pearl at 2015-11-09 15:17
追伸・濁り酒とは離れますが

そう!そう!
そのレトロな車だらけのキューバに行きたかったのです!

資本主義のモンスターが雪崩れ込めば、現地の人々は挙って“没個性”の車に乗り換えるでしょうね~(T_T)

(チェ・ゲバラの足跡を訪ねたいのが二番目そして音楽でしょうか。葉巻?は無いかな)
Buena Vista Social Club Band...良い映画でした♪
Commented by unburro at 2015-11-09 16:21
> mother-of-pearlさま

Buena Vista Social Club Bands!
まったく、最高ですね!
私の台所でのBGMその1、です(^o^)/

眠い時や急ぎの時は、レゲエやスカ、になりますが、
のんびり煮込み料理などには、コレですね〜
タンゴ、ボサノバもよいですねぇ。
ともあれ、ラテン系の音楽が好きです。
葉巻の香りも好きです。あまり煙たくない所もいいですね。
残念ながら、葉巻の似合う日本人は・・・ですが。

キューバの古き良き風景を惜しむ人は多いようで、
知り合いのアメリカ人は、この夏、早速出かけたようです。
そして、予想通り、観光客が激増!らしい…です。
と言うことは、観光資源としてあのレトロな車たちは、
残して走らすべき、という事になるか、な?

しかし、経済封鎖解除になると、やはり、街の風情や伝統文化は退化するのでしょうね。
EU加盟後の、ギリシャやスペインのように…
Commented by pallet-sorairo at 2015-11-09 21:51
>焦げくさき妻と夫と濁り酒           驢ノ439
この句、好きかも。
情景が浮かぶようです。
夜が更けるまで「かくかくしかじか」も羨ましい。
うちのヒトなど今どきの小学生より早く寝てしまいます。
まっ、ひとり静かに夜が更けるのも悪くないですが(^^ゞ
Commented by unburro at 2015-11-09 23:57
> pallet-sorairoさま

私も、この句、何となく気に入っています。
煤けた壁を持つ、昔ながらの一杯飲み屋のカウンターの中にいる
オヤジとオカミサンみたいな夫婦が、ひとつの理想です。
現実は、だいぶ違うのですが…

Commented by sheri-sheri at 2015-11-11 22:19
もう俳句の素晴らしさは言うに及ばず。秋の草花にunさんの詩情溢れる想いで寄り添ってらっしゃいますね。美しすぎる写真です。
Commented by unburro at 2015-11-11 22:52
> sheri-sheriさま

我が家のベランダに、打ち捨てられたようになっている
プランターのなかの秋景色です。
まさに、ちいさい秋…です。
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by unburro | 2015-11-09 00:50 | Comments(14)