逝く人
2015年 04月 04日
逝く人へ花はちりぬるちりつもる
まだ熱き骨の白さや辛夷咲く
背の骨を仏と云いて辛夷散る
骨上げの竹箸長し初燕
骨壺に軽く蓋せよ山桜
名人が逝って背伸びの蕨かな
還り来ぬ人と見上げる空に花
日は西にまだ落ちぬぞと花の山
骨壷の青磁が映す朧月
灯りなき山の夜にも桜咲く
驢ノ340から349
駄句である。
秩父札所三十番 法雲寺にて
叔父が逝った。
中国山地の山間の町へ、葬儀のために来た。
先月初めに、見舞いに行った時、
叔父と会うのもこれが最後かもしれない、と感じていた。
悪性リンパ腫が、全身を侵し、もう目もあまり見えない、
と嘆いていた。そんな、衰弱の様子だったのだ。
化学療法で、すっかり毛が抜けた頭を撫でさせて貰って、
なんか、エライお坊さんみたいだねえ、と笑って別れたのだ。
今日、棺の中の坊主頭は、また一段と徳を積んだ高僧めいて見える。
亡母の妹の夫なので、血のつながりは無いのだけれど、
祖母亡き後、母方の故郷に、唯一残って家庭を持った叔母の家が、
私達にとって、田舎といえる場所だった。
山村の自然や暮らしを教えてくれた大切な家の主であった。
山菜採りの名人、川遊びの達人であり、
秋の茸採り、自然薯掘りでも自慢の腕前。
農家でもないのに、都会から遊びに行く私達のために、
芋を植え、栗の木を育て、
芋掘り栗拾いの楽しみを教えてくれた人だった。
我が家の子供達も、何度も遊びに行った。
沢蟹を捕まえて唐揚げにして美味しかったこと。
クリスマスツリーの様に、蛍が群がる木を見たこと。
村祭りの興奮。夜道で出会った猿や鹿の目の光。
この叔父が居なければ、出会えなかった数々の体験がある。
72歳だった。
今時の70代は、ひと昔前の60代の若さだろう。
まだ若いと言ってもおかしくない事は、
葬儀に参列している人々のほとんどが、叔父より年上であることが、
証明している。
一番元気だったのに。
一番良い人だったのに。
一番頼りにしていたのに。
嘆く人々の上に、桜が満開である。
今年の桜は、見られるだろうか、と何度も言っていたという。
少し咲き出した時には、もう花を見られる容体ではなかったのだ。
川沿いや、山の麓や、家々の庭や、
山間のあらゆる場所で桜や辛夷が咲き誇っている。
それを列車の窓や、車の窓から見ていて、不思議な違和感があった。
火葬場の庭に立ち、満開の辛夷の花を見上げながら、
なぜだろう、と思っていたら、同じく都会から来た従妹が言った。
こんなに桜が咲いているのに、その周りに人がいない。
そんな風景、信じられない。
桜が咲いた、花が咲いた、というだけで、
人が集まり、立ち止まり、写真を撮る。飲み食いをする。
そんな景色に慣れてしまっているから、桜だけが咲いている、
その余りの静けさに、違和感を覚えるのだ。
桜は、人が居てもいなくても、ちゃんと咲くんやねえ。
と、誰かが言っている。
来年の桜も、再来年の桜も、愛でる人が逝ったとて、
咲くことをやめることはないのだな。
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こんの
at 2015-04-04 09:12
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後頭部がしーんとなるのは、どうしたことか
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こんの
at 2015-04-04 09:18
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at 2015-04-04 10:22
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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sheri-sheri at 2015-04-04 10:25
一番元気だったのに・・一番良い人だったのに・・一番頼りになったのに・・・。おっしゃる通り、そういう人こそ早々この世を後になさいますね。・・・いいおじ様でしたね。御冥福をお祈りします。
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unburro at 2015-04-04 12:12
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wawa38 at 2015-04-04 12:13
70歳は若いですね。
俳句、亡くなった方を惜しむ気持ちが伝わります。
お骨を長箸で運ぶ時の感覚、何とも言えませんね。それでも季節はいつも通り、そこにあって。
桜の句では、真っ暗な山に静かに咲いて散っていく桜が浮かんできました。それは、深い闇の中へどこまでも吸い込まれていくような。
ご冥福をお祈りいたします。
俳句、亡くなった方を惜しむ気持ちが伝わります。
お骨を長箸で運ぶ時の感覚、何とも言えませんね。それでも季節はいつも通り、そこにあって。
桜の句では、真っ暗な山に静かに咲いて散っていく桜が浮かんできました。それは、深い闇の中へどこまでも吸い込まれていくような。
ご冥福をお祈りいたします。
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unburro at 2015-04-04 12:19
鍵コメさま
私の叔父は、発見が遅れたのですが、
それでも、余命宣告の数倍の月日を過ごしました。
密度の濃い日々を過ごして逝った、とのことですが、
家族の思い、本人の辛さは、はかりしれないものであっただろう、と
想像するばかりです。
どうぞ、お大事になさってください。
私の叔父は、発見が遅れたのですが、
それでも、余命宣告の数倍の月日を過ごしました。
密度の濃い日々を過ごして逝った、とのことですが、
家族の思い、本人の辛さは、はかりしれないものであっただろう、と
想像するばかりです。
どうぞ、お大事になさってください。
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mother-of-pearl at 2015-04-04 14:15
桜も、本当はこよなく愛してくれていた人のことを覚えているのかもしれません。
そして、誰よりも悲しみながら咲いているのかもしれません。
花を咲かせる・・という行為が、幸せを謳歌していることと思うのは
人間の目、人間側の希望的観測なのかもしれません。
(かもしれません・・三部作)・・・でしたm(__)m
静かに咲き続けている桜と共に深くご冥福をお祈り致しております。
そして、誰よりも悲しみながら咲いているのかもしれません。
花を咲かせる・・という行為が、幸せを謳歌していることと思うのは
人間の目、人間側の希望的観測なのかもしれません。
(かもしれません・・三部作)・・・でしたm(__)m
静かに咲き続けている桜と共に深くご冥福をお祈り致しております。
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hisa33712 at 2015-04-04 14:25
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at 2015-04-04 14:34
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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unburro at 2015-04-04 15:41
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unburro at 2015-04-04 16:46
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unburro at 2015-04-04 16:47
mother-of-pearlさま
「かもしれません…」確かに…
生と死に直面すると、いかに何もかもが、
不確かなものであるか…と、つくづくと感じるのです。
ただ、思いを巡らすことしかできない。
でもそれが、大切な事、なの、かもしれません…。
「かもしれません…」確かに…
生と死に直面すると、いかに何もかもが、
不確かなものであるか…と、つくづくと感じるのです。
ただ、思いを巡らすことしかできない。
でもそれが、大切な事、なの、かもしれません…。
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unburro at 2015-04-04 17:00
hisa33712さま
ようこそ、お越しいただきました。
梟のご隠居の所で、時折、同席させて頂いていますね。
とある所の桜咲く公園の、長いベンチの端と端に座って、
同じ桜を見上げて居たのだ、という感じですね^_^
これをご縁に、今後ともよろしくお願いいたします。
私も、お気に入りにいれさせていただきます。
ようこそ、お越しいただきました。
梟のご隠居の所で、時折、同席させて頂いていますね。
とある所の桜咲く公園の、長いベンチの端と端に座って、
同じ桜を見上げて居たのだ、という感じですね^_^
これをご縁に、今後ともよろしくお願いいたします。
私も、お気に入りにいれさせていただきます。
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unburro at 2015-04-04 17:10
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hanamomo06 at 2015-04-04 20:17
今朝、出かける前に拝見し、お会いしたこともない unburro さんの叔父様のこととても近しく感じました。
私にもそんな血縁ではない叔父がいるのです。
叔母は62歳でなくなってからずっと一人で田舎に暮らしています。
とても姪思いの叔父で、いずれなくなってしまうのでしょうが、考えるだけで悲しくなるのです。
力作10句、どれも皆心に深く響きます。
72歳若かったですね。
ご冥福をお祈りします。
私達の年代、別れが多くなりましたね。
私にもそんな血縁ではない叔父がいるのです。
叔母は62歳でなくなってからずっと一人で田舎に暮らしています。
とても姪思いの叔父で、いずれなくなってしまうのでしょうが、考えるだけで悲しくなるのです。
力作10句、どれも皆心に深く響きます。
72歳若かったですね。
ご冥福をお祈りします。
私達の年代、別れが多くなりましたね。
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unburro at 2015-04-04 23:33
hanamomoさま
ありがとうございます。
私たちの世代には、両親の親族の中に必ず一人は、
そんな面白い叔父さん、がいるような気がします。
兄弟姉妹が少なく、未婚の人も多い、これからの子供たちには、
そんな叔父さんとの体験が少なくなっていくのでしょう。
別れが多くなる年代、本当にそうですね。
年の近い従姉妹たちと、次に会うのは、いつかしら?
と言いながら、誰かのお葬式を思い描いていたような気がします。
すぐに、それぞれが口々に、
「次は、お目出度い席で会いたいね」と言い直したのが、
その証拠です。
ありがとうございます。
私たちの世代には、両親の親族の中に必ず一人は、
そんな面白い叔父さん、がいるような気がします。
兄弟姉妹が少なく、未婚の人も多い、これからの子供たちには、
そんな叔父さんとの体験が少なくなっていくのでしょう。
別れが多くなる年代、本当にそうですね。
年の近い従姉妹たちと、次に会うのは、いつかしら?
と言いながら、誰かのお葬式を思い描いていたような気がします。
すぐに、それぞれが口々に、
「次は、お目出度い席で会いたいね」と言い直したのが、
その証拠です。
by unburro
| 2015-04-04 00:30
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